石井志をんの短歌研究、家族の歌

松江久志(まつえひさし)「花宇宙」春の巻 (その十七)

 

「予定なき事がうれしく日曜はスミレを野辺に女と愛しむ」

 

松江久志の著書「花宇宙」副題「松江久志の植物短歌歳時記」より

 

この歌で女とあるのは松江夫人の事であろうと推察される。何処にも妻とは

書かれていないが夫人以外には考えられない。長い間教職にあった歌人にとっで日曜日はかけがえのない休息の日であったであろう。既に成長した子等は巣立ち夫人と二人きりの週末、野に遊び可憐なスミレを見つけて愛でている。幸せの縮図の様な一首。

この歌集にスミレを詠んだ歌は松江久志自身の歌が十六首、松江久志以外の歌人の歌が三首紹介されている。その三首の中に土屋文明の「ただ一花咲きしすみれの花を言ふこの夕べ我等が家の喜び」が有る。筆者が子供の頃は歌人と言えば先ず土屋文明と決まっていた。余談だけれど、俵万智のサラダ記念日が一世を風靡した頃、或る記者が「先生はどう思われますか?」と土屋文明に問うたところ怒り出したという。

 

「菫

スミレ スモトリバナ

Viola Violas Violets

スミレ科の多年生草木

可憐な花で万葉集の時代から詠まれている。

【花言葉 誠実(紫) 無邪気(白) つつましい幸福(黄)】」

花は濃紫色                      「花宇宙」より

 

歌人 石井志をん 千葉県出身、カリフォルニア、サンタクルーズ、フェルトン市在住、日刊サン短歌部門の選者を務める、カリフォルニア短歌会会員、新移植林会員。

二〇二三年二月記

(注、カリフォルニア短歌会はロサンゼルス在住の松江久志主宰、新移植林はロサンゼル在住の中條貴美子主宰、どちらにも北米と日本の歌人が在籍)