石井志をんの短歌研究、家族の歌
松江久志(まつえひさし)「花宇宙」春の巻 (その六)
.......「クローバーを千切りやりつつ春の日に兎遊ばせ華やぐ吾子よ」
.................松江久志の著書「花宇宙」副題「松江久志の植物短歌歳時記」より
花宇宙、春の巻のクローバーの第二弾である。第一弾ではクローバーはツメクサと言う名前で登場している。歌人の家族で母、妻に次いで子供が初めて登場する。この歌の中で吾子がメインテーマなのだが、兎の存在も重要である。可愛い兎にクローバーを千切って与えて遊ぶ幼児の愛らしさ、兎の白とクローバーの緑色の対比の美しさ。華やぐ吾子よと詠っているが、華やぐとははしゃいでいる事ではないか。子を持つ若い父親の喜びが浮き彫りにされている。
今は無き私の夫が少年の頃、或る日帰宅すると飼っていた兎が伯父の手によって鍋に入っていたと言う、少年は走って河原に出て独りで泣いた。飽食の時代の今では想像も出来ない程の食糧難の時代の話である。
クローバーはとても身近な植物である。私が育った頃少女達は土手の何処にでも有るシロツメクサを編んで首飾りや王冠を作って物語の世界に入った。
エリザベスモンゴメリーの名作赤毛のアンではシロツメクサはダッチクローバーとして登場している。私は今でもクローバーを見ると幸運の象徴である四つ葉をごく自然に探している。
「クローバー
シロツメクサ
アカツメクサ
うまごやし 苜蓿
Trifolium repens シロツメクサ
Trifolium pratense アカツメクサ
Clover
ゲンゲに似た白い小花の毬状の花 」
【花言葉】
復讐 約束」 「花宇宙」より
歌人 石井志をん 千葉県出身、カリフォルニア州、サンタクルーズ・カウンティー、フェルトン市在住、日刊サン短歌部門の選者を務める、カリフォルニア短歌会会員、新移植林会員。 二〇二一年十一月記
(注、カリフォニア短歌会はロサンゼルス在住の松江久志主宰、新移植林はロサンゼルス在住の中条貴美子主宰、どちらにも北米と日本の歌人が在籍)