石井志をんの短歌研究、家族の歌:松江久志「花宇宙」春の巻(その三)

松江久志(まつえひさし)「花宇宙」春の巻 (その三)

「おさな子にかえりてお前と駆けてゆく菜の花畑の春の日ぬるき」

松江久志の著書「花宇宙」副題「松江久志の植物短歌歳時記」より

 

子供の様に菜の花畑を駆けてゆく二人は恋人同志であろうか、新婚間もないカップルであろうか。走っている二人の笑い声が響き、二人が揺らす菜の花、わき上がる風、その風が運ぶ香りまでが伝わってくる気がする。なんとも微笑ましくも羨ましい青春の縮図である。

結句の「春の日ぬるき」のぬるきとは温きと書く。春は浅いがもう寒くはなく丁度良い暖かさなのである。

 

「Brassica L.

アブラナ 菜の花

アブラナ科の二年生草木

種子から油を採った

夏目漱石が好んだ花」                 「花宇宙」より

 

菜の花の種子から採る油はCanola oil と呼ばれ健康に良い油とされている。菜の花は日本料理には欠かせない食材でもある。日本人は昔から春のひととき出回る蕾を和え物や漬物等様々な形で味わってきた。

菜の花は千利休の愛した花であり茶道の世界では利休忌3月28日以前に活ける事はタブーとされている。

 

歌人 石井志をん 千葉県出身、カリフォルニア州、サンタクルーズ・カウンティー、フェルトン市在住、日刊サン短歌部門の選者を務める、カリフォルニア短歌会会員、新移植林会員。

二〇二一年八月記

 

(注、カリフォルニア短歌会はロサンゼルス在住の松江久志主宰、新移植林はロサンゼルス在住の中条貴美子主宰、どちらにも北米と日本の歌人が在籍)