石井志をんの短歌研究、家族の歌: 松江久志 「花宇宙」春の巻(その五)

松江久志(まつえひさし)「花宇宙」春の巻 (その五)

 

「老母に出す便りに四つ葉のツメクサを描き田舎を羞しむ心」

 

………松江久志の著書「花宇宙」副題「松江久志の植物短歌歳時記」より

 

歌人は故郷の母に手紙を書いている、その手紙に四つ葉のクローバーのスケッチを添える、水彩画だろうか。私にも経験が有るが絵手紙と言うものは受け取る側の心をときめかす。

美しい絵手紙を喜ばれた母上は遠く住む優しい息子を想って胸が締め付けられたのではなかろうか。

ここに田舎と有るのは都会と比べた田舎ではなく故郷と言う事である。絵手紙を描きながら歌人は故郷を偲びほのぼのとした想いに満たされている。

 

「クローバー」

シロツメクサ

アカツメクサ

うまごやし 苜蓿

Trifolium repens シロツメクサ

Trifolium pratense アカツメクサ

Clover ゲンゲに似た白い小花の毬状の花

 

【花言葉】

復讐 約束                      「花宇宙」より

 

(注 結句に有る「羞しむ」はヤサシムと読みます。私にはこの字が読めず、色々調べてみたが最後は歌人に教えてもらった。そこに至る途中に、羞と言う字を使った面白い四字熟語に出会った。

羞月閉花 シュウゲツヘイカ とは月も恥じらい隠れ花も閉じてしまう程の美女ということから、容姿が極めて美しい事のたとえである。

時には白髪三千丈と詠ったり、中国人は実に大袈裟である。)

 

敬称略

 

歌人 石井志をん = 千葉県出身、カリフォルニア州、サンタクルーズ・カウンティー、フェルトン市在住、日刊サン短歌部門の選者を務める、カリフォルニア短歌会会員、新移植林会員。

二〇二一年一〇月記

(注、カリフォルニア短歌会はロサンゼルス在住の松江久志主宰、新移植林はロサンゼルス在住の中条貴美子主宰、どちらにも北米と日本の歌人が在籍)