松江久志(まつえひさし)「花宇宙」春の巻 (その十)
「花の中に花を楽しむ妻がいてあたり柔らか湖辺の桜」
「向き合いて小声で話す愉しさに桜の花びら艶めきてとぶ」
松江久志の著書「花宇宙」副題「松江久志の植物短歌歳時記」より
最初の歌、歌人でもある婦人を詠んだ歌である。湖辺の桜とあるから舞台は故郷島根県の宍道湖であろうか。花の中に花を楽しむ妻が居る、なんとも美しいスケッチである。「あたり柔らか湖辺(うみべ)の桜」とは桜の咲く湖の畔それでなくても美しい風景だがそれに加えて妻の存在があたりが柔らかにしているというのである。夫として幸せを絵に描いたとはこのような事をいう。
二首目の歌、向き合っている二人は歌人と夫人であろうと思う。
二人は向き合って小声で話している、傍目には何を話しているかはわからぬがまるで恋人同士のように、囁きあっているように見える。いかにも愉し気な二人の上に桜の花びらが舞う。二人を祝福するように飛ぶ花びらは艶めく。今を盛りと咲く桜は艶やかで妖しくそこに居合わせる人の心を惑わせもする。桜は危ない花でもある。
この歌から私は「なれそめの頃の様に」と言うシャンソンを思い出した。
「なれそめの頃のように震えるのよ心が
おぼつかない私が貴方の為に
初めてのあの朝桜の花の下で私は震えていた
逃れられぬ恋の定めーーーーーーーーーー 」
「桜
サクラ
Prums
Cherry blossom
Japanese cherry blossom
バラ科落葉花木
日本を代表する花木
ヤマザクラがサクラの原種
単弁で白く花と共に新芽がでる
【花言葉】優れた美人 精神美 純潔」
「花宇宙」より
歌人 石井志をん 千葉県出身、カリフォルニア州、サンタクルーズ・カウンティー、フェルトン市在住、日刊サン短歌部門の選者を務める、カリフォルニア短歌会会員、新移植林会員。
. ........................................................................ 二〇二二年一月記
(注、カリフォルニア短歌会はロサンゼルス在住の松江久志主宰、新移植林はロサンゼルス在住の中条貴美子主宰、どちらにも北米と日本の歌人が在籍)