板橋恵理のカリフォルニア人間観察:自斎生活の中で覚える計算と言葉の啜り法

2021年2月28日、ロサンゼルスにて、板橋恵理

こうして一年も続いている在宅生活の中での苦労や不便さは色々と存在し、  家庭に依っても異なるかもしれないが、  そのうちの一つに、   幼児や小学校低学年の子供達の勉強をみてやったり、  教える困難さが挙げられるようだ。

幼児や小学校低学年というと、  基本的な数字や計算、  そして言葉の読み方や啜りを習い始める 年齢だが、  現在に至るまでの長いバーチャル授業の環境下、  教える側の先生方も思うような時間が取れないし、  何よりも一対一の形式で生徒が理解出来ないことを教えてあげられるのが容易ではない。   共働きの親が在宅勤務をしていたら、  思うように子供の勉強をみてあげることが出来ないこともあるだろう。  かつ幼稚園や小学校の授業は通常仕事より早く終わるので、  自分の仕事もやりながらも、  授業後の子供を遊ばせたり、  外の空気を吸いに最寄りの公園に連れて行ったりすることも必要だ。

もうだいぶ昔の話だが、  アメリカ渡米当時、  アルファベットと数えるほどの単語しか知識がなく、  いくつものESLのクラスをとったり、  テレビ番組を見ながら英語を覚えた。  文法や啜りも何でも基礎から習ったので、  自慢ではないが 英語を母国語とするアメリカ人よりも知っていることもある。   啜りで言えば、  “Receive” やら “Mississippi” など、 年配のアメリカ人でさえよく間違える言葉が良い例だ。

アメリカ生活が長く、  英語の使用度が高い日常生活を送っていても、  数字は母国語である日本語で考えるほうが簡単で確か、  かつ安心するのだ。   買い物で支払う時も、  頭の中では、 「三十六ドル七十二セント」 という風にだ。   普段は全く馴染みのない、  四桁以上の数字を聞いたり見たりすればアワワと慌てて、  一、  十、  百。。。と日本語で数えて理解するというざまだ。

ある友人のところには三才の息子がいるが、  教えてもいないのにこの在宅生活の中で、  数字の0から59までを逆に復唱することを覚えたそうである。  なんでまた逆に覚えたのとの問いに、  「私達夫婦共に在宅勤務中なので、  せめてなるべく家族一緒に休憩時間をとるようにして  そのとき電子レンジを使っておやつやら飲み物を温めているのだけど、  電子レンジの前に立って温めている時間をずっと見るようになって、  それでいつのまにか覚えてしまったみたい」と苦笑している友の説明を聞いて、  大笑いしてしまった。

もう一人の友人宅には、  小学校二年生の女の子がいるが、  「vaccine (ワクチン)」 という言葉を頻繁に耳にするようになり、  ある日友人に、  「どうしてvaccine って言葉には、 ‘C’ の文字が二つ啜ってあるの?」 と聞いてきたそうだ。   自分だってコロナ以前は滅多に耳にしたり目にしたりすような言葉ではなく、  そんなこと考えてもみなかったが、  答えに詰まり、  思わず、  「今ワクチンは一回だけでなく、  二回接種を受けなきゃいけないからだよ」 と口走ったそうだ。  これを聞いて私は、  「偉い!  とってもクリエイティブな答えだ!」 と褒めたのである。  最近Johnson & Johnson  製のワクチンが承認されたが、  一回のみのワクチン接種だそうなので、  友人は将来別の説明を探さなきゃいけなく、  本当に面倒な事態になったんだなあとつくずく思う。

板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。

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