随筆日: 2022年2月16 日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
(ウエッブ掲載日:2022年5月20日)
2021年の3月22日付けでカルチュラルニュースに掲載された随筆、「マイノリティ-被害者の犯罪増加」にも書いたが、2020年のコロナ禍前後より、 全米内で犯罪が増加し、治安が不安定になっている。
コロナが犯罪増加の理由と思われがちだが、必ずしもそうではない。カリフォルニアだけでなく、他の州でも見られるが、盗み、強盗、暴動など、 アメリカ社会から見れば、 「軽犯罪」 とされるものに対しての処罰が軽くなっており、犯罪者は保釈金無し、 或いは短期間の監獄ですぐ釈放されてしまう。 そしてそれを悪用しながら、犯罪者は何度も何度も罪を犯し続け、それが結局殺人の重刑に繋がってしまう実例も多くある。去年(2021年)のウィスコンシン州でのクリスマスパレードにて、高スピードで群衆の中に突っ込み、死者を出した犯人は、長い前歴があった。カリフォリニアでは、今年の初めに、高級地域に並ぶある家具屋で、あちこちの州で前歴をいくつももったホームレスが、理由もなしに店員を刺殺した。サンフランシスコの刺殺事件で逮捕された犯人は、 それまで44件もの前歴があり、 これらに似た前科者に依る事件は、 ニューヨーク、シカゴな、 ミネソタ、 ペンシルバニアなど他の州や地域でも増加している。
ニュースを見聞きすれば、場所や地域に限らず、店の窓を割って品物を両手一杯に抱え出る、「Smash-and-Grab」という名称までついてしまった組織犯罪事件が多発し、嘆かわしくもん日常茶飯事 となってしまった。更にそれまでは安全とされていた、 ベバリーヒルズ、 パサデナ、 サンタモニカなど様々な高級地域で、 後をつき自宅の真ん前で貴重品をひったくる、 「Follow-home-invasion」の名称のついた犯罪も毎日どこかで発生している始末だ。 しかし、 例え犯人を捕らえても、「軽犯罪」として扱われるので、すぐ釈放され、事件が再発、 かつ悪化することに間違いない。
必ずしもそうではないが、 多くがホームレス、 或いは精神異常者の手に依って発生する事件だ。 カリフォルニアも含め、 他州でも、 ホームレスの問題は今まで以上に表面化し、 未解決のままで、 各地域の政治家やリーダーに早急な対応が要求されている。
更に、 これらの犯罪を取り締まる州のDistrict Attorney (DA-地方検事)の検察見解と能力が、 疑問に上がり、 激しく批判され、 カリフォルニアでは、 DAであるジョージ. ガスコンのリコール運動が2021年の暮れより始まっており、 11月の選挙まで持っていくには、 投票権のある市民からの566,857の署名が、 今年の7月6日までに必要だそうだ。 マーケットや、 公園、 その他人の集まる場所で、 署名運動が盛んに行われている。 ガスコンの方針は、 死刑執行と軽犯罪における保釈金の取り止め、 未成年者を成人者として起訴しないこと、 そして一定の犯罪を犯したギャングメンバーや前科のある犯罪者に対しての刑罰を軽くするなどを含む。 又現代のアメリカの刑事司法制度は、 奴隷制度と深く繋がりがあり、 それは人種差別的であると述べている。 しかし被害者、 加害者関係なしに、 犯罪は犯罪であることに変わりがなく、 そのように対応されねばならないのではないか。
ガスコンの政策は、 加害者の権利を尊重し、 被害者とその家族の権利と立場は全く無視しているというのが、 リコール支持者の見解だ。
しかも運悪く、 この犯罪増加の中で、 警官は乱暴過ぎで、 「レイシスト (Racist)」と、一定の市民達よりいとも簡単にレッテルを貼られ吊るし上げにされ、 警察への予算は他に廻すよう市長や政治家に訴える。自分が被害者の立場だったら、 誰に頼るのだろうか? 警察の事件対応が遅いと批判し、対応すれば今度は対応の仕方が乱暴すぎると吊し上げにする。くだんに挙げた「軽犯罪」で、加害者を何度も逮捕しても意味がない。穴があいたバケツに水を汲んでいるようなものだ。辞めていく警官も多い。
方針や政策を変えていかないと、解決の難しい問題である。その為には我々市民も団結して、声を上げなければならないのだろう。
随筆日:2/16/2022
改訂日:2/17/2022、 5/6/2022
投稿日:5/6/2022
ウエッブ掲載日 5/20/2022
板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。