板橋恵理のカリフォルニア人間観察:慣れなかったり慣れたり

投稿2021年8月19日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
(ウエッブ掲載:2021年8月25日)

 

カリフォルニアでコロナ規定がとりあえず解禁となったのが六月十五日、  その前後に身近で気が付いたことが何点かある。

自宅にいるときは、  リビング兼ダイニングルームの窓際に沿って設けられたテーブルで多く時を過ごし、  ここでパソコンを置き仕事をしたり、  食べたり、 読書をしたりするので、 外の様子が否応なしでも分かる。 コロナ規定中は毎日何回も、  時には一時間に数回、 Federal Express、UPS、 Amazonなどの配達トラックが行き交うのを目にした。スーパーマーケットの配達トラックも見た。人々はネットを頻繁に利用して買い物をしていたのだろう。食料品や日用品などは、目や手で重さや大きさなど確かめたいが、実際店に行ったら売り切れになった品もあったりで、二―三回程我が家も慣れていなかった配達サービスを初めて利用してみた。ところが最近はこれらの配達トラックは殆ど見なくなった。解禁と共に人々の外出も増えたからだろう。

これと比例してか、人々の出すゴミもそれまで配達会社のロゴ付きのでかい段ボール箱やら包みが少なくなったような気がする。これは毎日している近所の散歩中に気付いたことである。別に人様のゴミ観察をしてるわけではないが、週に一回のゴミ収集日にはどうしても視界に飛び込んでくる。

六月の解禁と共に、 転勤や引っ越しなどと移動も増えたようで、  近所に住んでいた家族三件は、  次々にテキサス、 シカゴ、 日本へと飛んで行った。  実際六月から今現在の八月にかけ、  普段は見ない大きな引っ越しトラックが何台も行き来するのが視界に飛び込んでくる。 ある家族はコロナ禍直前にロス転勤となり、 外出禁止、 自斎、 在宅とバタバタと続くなか、 やっと子供もその生活に慣れてきたと思うのもつかぬま、  日本帰国となり苦笑していた。

テレビのニュースを見れば、コロナ規定中はお互いそれこそ六フィートの間隔を開けて座っていた二人のニュースキャスター達は、今は元通りにくっついて座りニュースを伝えている。間隔を開けて座り始めた時も元通りに戻った時も、それまで慣れていた、或いは慣れていなかった光景に一瞬違和感さえ感じたほどだ。

テレビのトークショーでは、いまだにズームやビデオを利用してゲストを迎えたりしている番組もあれば、既にスタジオで行っている番組もある。トークショーなどは、やはり同じ場所で皆が対話や討論する場面を見たいと思うのは私だけだろうか。ズームやビデオだと、確かに時間や時差、交通の心配もなく、どこからでも出来、  経費節約にもなるのだろうが、出演者達の服装、ジェスチャー、表情、反応、お互いの相性など全体的に観察出来ない。ホストとゲストの間での「間」や雰囲気もかもし出されないのではないか。見る側からすれば、こういった何気ない要素を把握出来ることが、番組の面白さにもなるのではないだろうか。

ワクチン接種をしていなかったり、ファイザーやモデルナだと一回しか受けていない人達がまだ大勢いるそうで、特に感染度の非常に高いデルタ株が出回っている中、国も州も市もワクチン接種の推進を強く勧めている。そんな中で屋内では再度マスク着用となった。  外ではマスクをしていなくても良いが、  安心だからと以前の如くしている人も多くいる。

結局は昔慣れていなかったことに慣れつつあり、ワクチン接種者が増えてコロナ禍が落ち着くまでは、 こうして慣れたり慣れなかったりしながらも今後も毎日を過ごして行くのだろう。

随筆日: 7/9/2021
改訂日:    8/16/2021、 8/18/2021
投稿日:    8/19/2021
ウエッブ掲載:8/25/2021

板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。

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