板橋恵理のカリフォルニア人間観察:鷲の飛ぶ地 – カリフォルニアからウクライナへの思い

随筆日: 2022年3月7日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
(ウエッブ掲載日:2022年3月27日)

 

カリフォルニアの、  スキーリゾートとして知られている、 ビッグベアー (Big Bear) の高山に、 数年前よりカメラが取り付けられていて、  白頭鷲 (Bald eagle)が、 巣の中で卵を温める様子と経過が、 リンクをクリックすれば毎日いつでも観察出来るようになっている。 ジャッキー(Jackie-雌)とシャドー(Shadow-雄)と名前を付けられていて、二年前の冬から春先までの数か月間、  あるテレビ局で毎朝のニュースの一定の時間に2-3分ほど、  その様子を報道するようになり、  知ったことだった。    

白頭鷲は、 毎年12月から1月にかけて、 何千マイルもかけてカリフォルニアへと移動し、 巣作りをする。  冬の終わりから春先に通常1個か2個の卵を産み、 孵化期間は約35日間、  雌と雄のペアが、 交代で卵を温める。主に雌が巣に残り、雄が餌を探し求めに行く。そして雄が戻ってくると、今度は雌が巣を一時離れ、雄が卵を温めるそうである。

白頭鷲は、 絶滅危機のさらされた動物とされている。今は使用が禁止されているが、 第二次世界大戦直後、 蚊などの虫の対応にと使われた農薬で、 鷲が中毒をおこし、 その結果卵に影響を及ぼしたり、鉛を含む廃棄物やら獲物の死骸も、白頭鷲の死を招いた。そして土地や住宅の開発や、電力線の取り付けも、理由のひとつだ。 違法狩猟する人間もいる。その為、 白頭鷲は、カリフォルニア法に基ずき、  保護されている。

雛はわずか数週間目で、親元を離れ巣立ちをし、北方へと飛んでいき、他の白頭鷲と共に餌を得ることを学び、数か月後再度カリフォルニアヘ戻ってくるくそうだ。

現在ロシアのウクライナ侵攻戦争の真っ只中、ロシア軍からの空襲を、死にものぐるいで隣国のポーランド、 ルーマニアへと逃げるウクライナの難民の様子が、毎日ニュースの画面いっぱいに広がる。既に280万人近くものウクライナ人が、電車、車、徒歩で脱出している。ロシア軍と戦う為に、18歳から60歳までの男性は、ウクライナに残るよう指示されており、他国へ避難した妻、兄弟、子供、両親にいつ会えるか、いや果たして会える日がくるのか分からない。状況を理解出来ない幼児が、遊びかと思い、戦場に残る父親に笑いながら、話しかけ、しがみついている。これらの男性の多くは、今まで銃さえ持ったことのない、大学の講師だったり、銀行員だったり、レストラン業を営んでいた素人である。ある同棲中のカップルは、両人共に留まり、祖国の為に戦うことに決め、軍装姿で、焼け残りの場所にて式を挙げた。仮防空壕の中では、6-7歳の子供が、あどけない顔でディズニー映画の主題歌を皆に歌い聞かせている。その澄んだ声、笑顔と無邪気さが、涙を誘う。最近では、 11歳の男の子が一人、  ビニール袋ひとつでスロバキアまで無事脱出した様子がテレビで放映された。  母親は年老いた自分の母親の世話をするのに、 ウクライナに残り、 息子に電話番号、 その他の連絡事項を手や腕に書いてやり、 胸が潰される思いで見送った。

去年、ジャッキーとシャドーが世話していた二個の卵は残念ながら孵化せず、子孫を見ることが出来なかったが、今年は二個の卵の内、つい先週一個が孵化し、ジャッキーが雛に餌を挙げている模様を見ることが出来る。まだ産毛だらけの、人間の手のひらに乗ってしまいそうな小さな雛が、6-8フィートもの長さの翼を持つ白頭鷲に成長するなんて、信じられない。鷲は、自由を象徴するアメリカのシンボルである。一個が孵化したことに、希望が与えられる。  そして出来るなら、  大きな空へと、  自由に飛んで行って欲しい。

 

随筆日:3/7/2022
改訂日:3/8/2022、 3/16/2022
カルチュラルニュースへの投稿日:3/17/2022
ウッブ掲載日: 3/27/2022

 

板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。

板橋恵理のカリフォルニア人間観察(エッセイ一覧)