随筆日: 2022年4月12日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
(ウエッブ掲載日:2022年4月22日)

先日ロサンジェルス郊外で襲撃事件が発生し、 2人が死に、 3人が重傷を負い、 又銃に依る事件かと思っていたのも束の間に、 今度はニューヨークの地下鉄内で、 やはり銃に依る襲撃事件が起こり、 負傷者を出した。

特に、 銃が使われている集団襲撃事件が発生する都度、 又かと人々は不安に陥り、 政治家達も、 「Enough is enough!」と叫び、銃規制を連邦政権に訴える。しかし何も変わらず、毎年どこかで何かしらの集団襲撃事件が発生し、今日に至る。それどころか犯罪の増加があちこちで見られる。

今年の初めから二月初期までの間、ロサンジェルスでは、39件の殺人事件が発生しており、去年の同じ期間では、31件であった。更に、 ロサンジェルスを含むアメリカで全体での犯罪率は、2010年より12%上昇しており、殺人や暴行は25%以上の増加だそうである。

しかしこれらの犯罪は、銃に依る暴行や殺人事件とは限らず、ナイフを使った刺殺事件、或いは素手での暴力に依って起きた殺人事件も多く含まれているのだ。実際今年の初めに、ロス郊外の高級地帯にある店で、まだ24歳の若い店員が根拠もなしにホームレスにナイフで殺害される事件が起きたり、バス停でバスを待っていた看護婦に暴力を振るい、殺害した無差別事件もあった。ニューヨークやサンフランシスコでも、バスやら地下鉄の利用者に理由もなしに暴力を振るったり、地下鉄のプラットホームに押し倒されて、死亡した女性の事件も大きく取り上げらていた。

銃の反対者は、銃に対しての厳しい規制の執行を訴えるが、くだんの例のように銃だけが人を傷つけたり殺したりするわけではない。実際20年前に起きた9月11日のテロ事件で、テロリスト達は、箱などを切ったり、 分解するカッターナイフを使って、 乗務員や乗客を脅し、 それぞれのフライトを乗っ取ったと言われている。  機内のサービスに出されるプラスチックのナイフなどで、乗務員や乗客を脅したと言う説もあった。

アメリカのあちこちの大都市では、ホームレス増加と、 ホームレスに依る犯罪、犯罪と犯罪者に対する保釈金の廃止、短い量刑、そして警察への資金撤廃など、様々な社会問題が実在し、犯罪増加の要素ともなっているのではないか。

ホームレスと言っても、中には経済的問題で、ホームレスにならざぬ得なかった人達もいて、色々な苦労を重ねて社会に無事復帰したケースも多くある。しかしホームレスの中には、精神異常者もいれば、麻薬中毒者もいて、住み場所もなければ、治療を受けられる場もない。更に、  いくつもの前科のある者も多く存在し、 実際くだんのロス郊外の店、バス停、そしてニューヨークの地下鉄で起きた殺人事件は、どれも多く前科のある、 或いは精神異常者と思われるホームレスの手に依って犯された。

だから例え銃が更に強く規制されても、襲撃やら殺人事件は減少するとは思えない。事件に使われる武器に焦点を置くのではなく、それらの武器を悪用する犯人と適切な刑罰を起訴することにもっと焦点を向けていくことが、犯罪防止に少しでも繋がっていくのではないだろうか。

 

随筆日:4/12/2022
改訂日:4/16/2022
カルチュラルニュースへの投稿日:4/16/2022
ウエッブ掲載日:4/22/2022

 

板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。

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