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9月3日で、ロサンゼルスの日本語TV局UTBがデジタル地上波による24時間放送を打ち切りました。約40年前にUTBの日本語放送が始まったときは、週末の数時間だけの放送だったのですが、今後のUTBの放送時間は、これまでで一番短い、日曜日の夜の1時間30分だけになります。
また、27年間続いたロサンゼルスにおける無料雑誌のパイオニア「ブリッジUSA」が10月号で最後に廃刊になります。昨年から今年にかけて、無料英字月刊雑誌のSushi & Sake とJapan Connection が店頭から消えました。
100年以上の歴史をもつ、ほぼ日刊のロサンゼルスの日本語新聞「羅府新報」(らふしんぽう・英文欄も併設)が3月に紙面で、自社の経営危機を公表しました。年間50ドルの電子版の購読者が12月までに1万人集まらないと、廃刊すると告知しました。(9月21日現在のところ、12月末で羅府新報が廃刊になる気配はありません。)
地上波による24時間日本語放送の打ち切りで、逆に、日本人のニーズをつかんでいるのがケーブルや衛星配信による24時間有料日本語放送のTVジャパンです。わたしが、ロサンゼルスで日本人の家庭を訪れるとほとんどの家庭で、TVジャパンを契約しています。
TVジャパンの本社はニューヨークで、ロサンゼルスには支社がありません。つまり、日本語で日本や世界のニュースを見ることはできるのですが、TVジャパンでは、ロサンゼルスのローカルニュースを見ることはできないのです。
移民社会では、地元の移民社会に密着したメディアが存在することが、その移民コミュニティーが存在することを意味します。現在、進行中のインターネットやケーブル・衛星放送の普及は、一般のひとに世界中の情報が瞬時に手に入る方法を提供しているのですが、同時に、従来から続いてきた移民社会におけるローカルメディアの経営を圧迫し、その結果、移民コミュニティーが崩壊していくという、結果を引き起こしているのです。
ところで、21世紀の日本人移民コミュニティーには、20世紀前半には、考えられなかった現象が起こっています。それは、日本文化に関心を寄せる他人種からの問い合わせです。日本語を学びたい、お寿司を作ってみたい、剣道をやってみたい、着物を着てみたい、というリクエストが多くの他人種から日本人コミュニティーに寄せられているのです。
海外で日本人コミュニティーが存在する意義は、これからは、他人種に日本文化を提供することになっていくのではないかと、わたしは考えています。
(カルチュラルニュース編集長、東 繁春 2016年9月21日 記)
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東繁春はなぜ、英字新聞を作っているのか (リンク集)
No. 1: 1981年で、すでに実態とかけ離れていた日系新聞の編集方針
http://digest.culturalnews.com/?p=5194
No. 2: アメリカ国籍男性と結婚するために渡米する日本人女性
http://digest.culturalnews.com/?p=5191
No. 3: 21世紀の日本人コミュニティーの存在意義
http://digest.culturalnews.com/?p=5185
No. 4: 記者ないなくてもメディアは作れる
http://digest.culturalnews.com/?p=5180
No. 5: 十人の篤志家を求めています
http://digest.culturalnews.com/?p=5176