2016年7月28日記(2025年2月4日追記)

最近のアメリカでは、警察官が射殺される事件がたくさん起こっています。

先日、日本からのニュースをYouTube で見ていたら、「保安官補」が撃たれたというニュースが流れていました。

アメリカに住んでいる方なら「保安官補」というのはDeputy Sheriff の直訳であると理解し、警察官のイメージを思い浮かべるでしょう。

しかし、Deputy Sheriff を見たことのない日本人にとっては、「保安官補」とはいったい、どんなイメージになるのでしょうか。

はっきり言って、「保安官補」では誤訳です。21世紀のアメリカに、いまだ馬に乗った保安官がいるでしょうか。

Sheriff ということばができた150年くらい前のアメリカは、人口が少なく、どこへ行っても村という状態でした。

その時代、治安に携わるシェリフは個人の仕事でした。しかし、アメリカが都市化、近代化するにつれて、20世紀には、シェリフの仕事は組織になって行きます。現代のアメリカではシェリフとは、治安組織全体のトップを示し、Deputy Sheriff というのは、その治安組織に属す警察官のことを意味しています。

それから、シェリフが目を光らせる管轄地域はCounty という行政単位です。City より上級、State の下級行政単位です。19世紀には、Countyには「郡」という訳語があてられました。「マジソン郡の橋」に出てくる「郡」です。

Los Angeles County Museum of Art の日本部門の上級学芸員のロバート・シンガーさんは、LACMAの日本語訳は「郡」を使わず「カウンティー」を使ってくれと、何年か前に言っていました。

[2016年10月1日追加:County を郡行政区と訳してみる方法もあるかもしれません。]

1850年のロサンゼルス・カウンティーの人口は 3530人でした。
2020年代のロサンゼルス・カウンティーの人口は、約1000万人です。

Sheriff of Los Angeles County
19世紀の翻訳=ロサンゼルス郡保安官
21世紀の翻訳(A)=ロサンゼルス・カウンティー保安局長
21世紀の翻訳(B)=ロサンゼルス郡行政区保安局長
21世紀の翻訳(C)=ロサンゼルス・カウンティー警察本部長

Deputy Sheriff of Los Angeles County
19世紀の翻訳=ロサンゼルス郡保安官補
21世紀の翻訳(A)=ロサンゼルス・カウンティー保安局警察官
21世紀の翻訳(B)=ロサンゼルス郡行政区保安局警察官
21世紀の翻訳(C)=ロサンゼルス・カウンティー警察官

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カルチュラル・ニュース編集長、東 繁春
higashi@culturalnews.com
Shige Higashi / Editor and Publisher of Cultural News