東繁春はなぜ英字新聞を作っているのか No. 4 「記者はいなくてもメディアは作れる」
1981年3月からロサンゼルスの日刊日本語新聞「加州毎日」で日本語記事の編集に携わりました。わたしに与えられた編集の仕事は主として、英文記事の日本語への翻訳でした。翌月の4月になって、リトル東京のレストランが立て続けに移民局の手入れを受けて、日本人が何人も捕まっているとウワサが流れ始めました。
ところが、日系新聞の先輩記者たちは、加州毎日も羅府新報も、誰もそのことを書かないのです。誰もやらないなら、わたしがやるしかないと決断し、編集長に相談することもせず、自分で勝手に取材をして、1回300字程度の短い記事を3回に分けて書き、編集長に出してみたことろ、3本とも加州毎日に掲載してもらうことができました。
そしてこの記事によって、日系新聞体験がわずか1カ月という新人のわたしが、リトル東京の“事件記者”として、ロサンゼルスだけではなく、サンフランシスコにまで有名になりました。同じ現象は、30年以上経て、昨年夏の敬老施設売却問題で、記事を書いた羅府新報の中西奈緒さんのケースに見ることができます。長年、羅府新報の記者をやってきた人たちは、この問題をまったく取り上げませんでした。羅府新報でこの問題を取り上げたのは、入社して1カ月にもならない中西さんだったのです。
ロサンゼルスに住む日本人の数は約10万人です。一見、多くの人数のように見えますが、村社会です。取材をしていると、必ず知り合いの名前が出てきます。こうゆう環境では、ジャーナリズムをなりたたせるのは、そうとう困難なことだと思います。
しかし、ロサンゼルスに住む日本人にとって必要な情報を効率よく集め、提供することはジャーナリズムの経験がなくてもできることですし、インターネットの発達によって、10年前には考えられなかった情報提供サービスが、超低コストでできるようになっています。
カルチュラルニュース日本語版ウエッブサイト(http://digest.culturalnews.com) には、ユーザー名とパスワードを持っている人は、どこからでも書き込みをすることができるシステムが入っています。
21世紀は、新聞記者のトレーニングを受けたことがない人が、ウエッブサイトやEメールを使って重要な情報を発信する時代になっています。わたしは、21世紀の情報発信者を「ウエッブ記者」と呼ぶことにしました。カルチュラルニュースは「ウエッブ記者」を募集しています
(カルチュラルニュース編集長、東 繁春 2016年9月24日 記)
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東繁春はなぜ、英字新聞を作っているのか (リンク集)
No. 1: 1981年で、すでに実態とかけ離れていた日系新聞の編集方針
http://digest.culturalnews.com/?p=5194
No. 2: アメリカ国籍男性と結婚するために渡米する日本人女性
http://digest.culturalnews.com/?p=5191
No. 3: 21世紀の日本人コミュニティーの存在意義
http://digest.culturalnews.com/?p=5185
No. 4: 記者ないなくてもメディアは作れる
http://digest.culturalnews.com/?p=5180
No. 5: 十人の篤志家を求めています
http://digest.culturalnews.com/?p=5176