
IMAGE: President Trump and Tulsi Gabbard at swearing-in of Director of National Intelligence in White House, February 12, 2025. (Source: White House)
在米ジャーナリスト 髙濱 賛 (Tato Takahama)
2026年5月23日
PACIFIC RESEARCH INSTITUTE―トランプ政権第二期で、女性閣僚の離脱が相次いでいる。
トゥルシ・ギャバード国家情報長官が、夫の希少な骨癌診断を理由に辞任を表明し、2026年6月30日付で退任する見通しとなった。
ギャバード氏は辞表の中で、「今は夫のそばに付き添い、この闘病を全面的に支える必要がある」と説明した。トランプ大統領もSNS上で「彼女は素晴らしい仕事をした」と投稿し、その働きをねぎらった。
しかしワシントンでは、今回の辞任を単なる家庭の事情としてのみ見る向きは少ない。
ギャバード氏は、対外介入に慎重な「抑制派」の代表格として知られていた。イランやベネズエラをめぐり強硬姿勢を強めていたマルコ・ルビオ国務長官やスティーブン・ミラー大統領次席補佐官らとは、外交・安全保障観で明確な違いがあった。
実際、最近の対イラン軍事作戦やベネズエラ関連の軍事計画では、情報分析の中心にいたのはジョン・ラトクリフCIA長官であり、国家情報長官であるギャバード氏の存在感は次第に薄れていたと報じられている。
さらにCIAやFBIとの対立、情報機関内部での大規模な人事刷新、機密資格をめぐる混乱なども重なり、ギャバード氏の立場は政権内で弱まっていた。
トランプ政権第二期は、対外強硬派と「アメリカは海外に深入りすべきではない」と考える抑制派を同時に抱え込む形で発足した。しかしここ数カ月、後者の影響力低下は目立っている。ギャバード氏の退任は、その流れを象徴する出来事として受け止められている。
政権を離れた女性閣僚には、パム・ボンディ司法長官、クリスティ・ノーム国土安全保障長官、ロリ・チャベス=デレマー労働長官がいる。
ボンディ氏はフロリダ州司法長官出身、ノーム氏はサウスダコタ州知事出身、チャベス=デレマー氏は地方自治体の市長経験を持つなど、それぞれ異なる政治経歴を歩んできた。
州司法、州行政、連邦議会、地方自治はいずれもアメリカ政治の中核を担うキャリアである。
退任の理由はそれぞれ異なる。しかし、それだけでは説明しきれない共通の傾向も見えてくる。
ワシントン政界通が注目しているのは、トランプ政権特有の「人の使い方」である。
トランプ大統領は、従来型の官僚的な政権運営よりも、「誰がどれだけ自分に近いか」「誰がメディアで目立つか」を重視する傾向が強い。
そのため閣僚は、政策を着実に運営する専門家というより、大統領の政治的メッセージを体現する存在として扱われやすい。
もちろん、「歴代政権でも『忠誠心』は重要だった。しかしトランプ政権では、その比重が極めて大きい」(主要メディアの政治記者)といわれてきた。
だが、その「忠誠心」に対する評価も固定されてはいない。大統領との距離感やメディアでの振る舞い、その時々の政治状況によって絶えず変化する。
ギャバード氏に対する評価は、その典型だった。
同氏は民主党出身でありながら、トランプ支持へ転じた異色の政治家である。軍歴や反介入主義という独自の政治信条を持っていた。
同氏は、ロシア疑惑をめぐってオバマ政権を激しく批判し、これをトランプ氏から高く評価され、「今一番勢いがある政治家だ」と持ち上げられたことがある。
ところが閣僚就任後は、アジア訪問時に投稿した動画がトランプ周辺から「自己宣伝的だ」と問題視された。
称賛と不満が短期間で入れ替わる。そこがトランプ流政治の特徴だった。「猫の目のよう」に変わるのである。
政治コラムニストのディビッド・フラム氏は、トランプ政治を「制度よりも忠誠関係で動く政治」だと指摘している。
政治評論家のピーター・ウェルナー氏は、「政策より人物への同一化が優先されるのがトランプ政治文化だ」と論じている。
その半面、トランプ氏には別の思惑もあった。
米シンクタンクの政治戦略専門家の一人はこう指摘する。
「トランプは司法、国土安全保障、情報活動といった政権の中枢を担う分野のトップにボンディ、ノーム、ギャバードといった女性を起用することで、一挙両得を狙った。女性登用を強調しつつ、政権のイメージ戦略として視覚的な印象にも配慮した可能性がある」
だが政権運営というトランプ氏の「ディール(取引)」の前では、ジェンダーの問題は二の次、三の次として扱われた可能性が高い。
浮かび上がっているのは、政策能力や行政経験、可視化よりも、大統領との関係や損得勘定が優先されたという現実である。
それこそがトランプ政権の特徴そのものであり、閣僚は安定した専門職というより、政治的象徴として消費されたに過ぎない。
女性閣僚の相次ぐ離脱は、単なる偶然の連続とは言い切れない。
そこには、トランプ政権がどのように人を重用し、どのように距離を置いていくのかという権力運営の実像が映し出されている。
■参考文献
Aaron Blake, “Americans may be losing their ‘Trump desensitization syndrome’,” CNN, May 21, 2026.
“Gabbard to step down as Director of National Intelligence,” The Washington Post, May 22, 2026.
“Gabbard announces resignation citing family health reasons,” Reuters, May 22, 2026.
Julian E. Barnes and Dustin Volz, “Gabbard, Citing Ill Husband, Resigns as Intelligence Director,” The New York Times, May 23, 2026.
David Frum, “The Normalization of Trump’s Extremes,” The Atlantic, April 18, 2026.
Peter Wehner, “Why Republicans Keep Normalizing Trump,” The Atlantic, March 9, 2026.
Reuters/Ipsos Poll, “Majority of Americans Say Trump Has Become More Erratic With Age,” May 20, 2026.
ABC News / Washington Post / Ipsos Poll, “Public Concern Over Trump’s Mental Sharpness Reaches Record High,” April 28, 2026.
Politico, “Trump administration cabinet turnover reports,” May 2026.
■English Summary
The article analyzes the growing turnover of female cabinet officials in Trump’s second administration as a reflection of his governing style. It argues that personnel decisions are shaped less by institutional stability or professional expertise than by loyalty, proximity to the president, and political symbolism. The resignation of Tulsi Gabbard is presented as emblematic of both ideological tensions within the administration and the declining influence of restraint-oriented officials. More broadly, the piece suggests that cabinet members are treated not as stable technocrats but as disposable political instruments within a transactional system of governance dominated by Trump’s shifting evaluations of loyalty and usefulness.
Note: English translation prepared by the author. Translation assistance tools may be used.
