投稿2021年10月9日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
(ウエッブ掲載:2021年10月13日)
これを書いている現在、 15,000人もの不法移民がテキサスのデルリオ(Del Rio)に集まり、 イミグレーション問題が更に表面化しつつある。
ひと昔前は、 メキシコからの不法移民が多かったが、 現在はハイチからの移民が主で、残りは仕事を探しにあちこち国をさまよっているブラジルや、 エルサルバドル、 ホンデュラス、 グアテマラなどの南米諸国からの難民で成っているそうである。 特にハイチでは、 大地震、 不安定な政権、 暴動などが経済、 治安状況を悪化させている上に、 コロナワクチン接種が行き渡っていないことなども、 何か月間もかけてのアメリカに向かう放浪の旅の理由らしい。
テキサスに到着したハイチからの移民は、 ハイチよりチリ、 コロンビア、 ボリビア経由で危険なジャングルを抜けながら奮闘の旅を続け、 ようやくメキシコに入る。 しかしメキシコで受け入れられなかったハイチや他国からの移民は、 リオグランデ河 (Rio Grande) を幼児や荷物を肩に担ぎ、 胸まで水に浸かりながら渡り、 必死の思いでアメリカ側に辿り着き、 気温が100℉を越す中、 現在はメキシコとつながっているテキサスのデルリオの橋の下で足止めになっている。 食料や水などは、 メキシコまで再び戻り買い求めているそうである。
つい先週は、 デルリオの国境地で馬に乗ったアメリカの国境警備隊が、 馬の手綱を移民に向かって振り回しながらアメリカ国境地帯を超えさせないようにしていたり、 馬の前を横切ろうとした移民の子供に卑猥な言葉を発し叫んだりしていたという記事やら写真をミディアが取り上げ、 ニュースの画面に映し出されていた。 バイデン政権は国境警備隊の行動を批判するなか、 ハイチからの不法移民者の強制送還を実施し始め、 メキシコはグアテマラへ移民送還を始めた。
トランプ前大統領政権下では、 不法移民の亡命は許可されず即送還となり、 それはバイデン政権下においても引き継がれてはいるが、 現実は子供を連れた家族での移民が多いので対応も困難で、 バイデンの大統領としての勢力や能力も多いに疑問に上がり非難されている。
アメリカは元々移民で成っている国であり、 1980年代はベトナムから海を渡って来たボートピープル(Boat People) を、 そして最近ではアフガニスタンから脱出した移民をアメリカは受け入れたが、 両国ともアメリカ史上長く深い関係があったこともあるだろう。
誰でも自由と過ごしやすい生活を求めるし、 その権利は尊重されるべきだろう。 しかし不法的に入国すればそれなりの問題が色々生じてしまうのも確かであり、 各国は国民、 経済、 治安、 安全を守る義務があるし、 優先されるべきだ。 「オープンボーダー(Open border)」という言葉をよく耳にするが、 これは矛盾語法だと思う。 何の為に国境があり、 国境警備隊が存在している意味もなくなってしまう。 オープンボーダーであれば、 不法移民を強制送還しても、 時が経てば同じ問題が再発生してしまう。 法的にアメリカ市民権申請中の移民達も大勢いるのだ。
今回のイミグレーション問題で、 バイデン大統領はまだ一度も国境を訪ずれていない。 となると、 くだんの馬に乗った警備隊の行動も映像からだけでは一概に批判出来ないのではないだろうか。 人や何か障害物が前に現れれば、 馬は怯えて前足を高く挙げ蹴ることもあるので、 移民にとっても警備隊にとっても大変危険だ。 それをコントロールする為に警備隊も手綱を振り回していたのかもしれない。 仮にもしそうだとしたら、 メディアの報道する写真や記事だけでは、 正確に現状を把握することが出来ないだろう。
沈黙を守っているバイデンだが、 実際現場を訪れ現状を理解することからこの問題の対応に繋がっていくのではないだろうか。
随筆日: 9/26/2021
改訂日: 9/27/2021、 10/7/2021、 10/9/2021
投稿日: 10/9/2021
ウエッブ掲載日:10/13/2021
板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。