板橋恵理のカリフォルニア人間観察:心の奥深く響く太鼓 

2021年4月25日、ロサンゼルスにて、板橋恵理

若い頃より興味のあった和太鼓のクラスをとりに、  八年前の2013年日本の浅野太鼓の浅野勝二氏によって設立された Asano Taiko U.S/ Los Angeles Taiko Institute-LATI. (20909 Western Ave, Torrance, CA 90501, taiko@asano.us) ヘ通い始めてから早くも六年が経とうとしている。  ちなみに同時に飼い始めた老猫も 「タイコ」 と名ずけた。

LATIでは大太鼓を始め、 桶太鼓、 締め太鼓、 中太鼓と揃い、 幼児から高齢者まで、 そして自閉症の子供達を対象にしたクラスが幅広く設けられ、 人種様々な生徒達より成っている。  スタッフを始め、  教師やコーチの応対や指導もとても良心的で、  それが生徒達の中でも反映しているようだ。  お互い分からないことを進んで教え合ったり、  いつもクラスは笑いに満ちていて楽しい。  毎年十二月には、  市の劇場でリサイタルが開かれ、 何百人もの観客を前にライトで照らされたステージに立って演奏する。  とても緊張はしミスもするが、  滅多に経験することのない機会を与えてくれる学校側に感謝の気持ちでいっぱいだ。

日本の有名な太鼓グループ、 「鼓童」 に依る演奏に影響を受け太鼓を始めた人も多いだろう。 私もその一人で、  太鼓を打つ身体のスタンスと太鼓の響きにひどく感銘を受けた。  若い頃バレエを習っていた私にとり、  太鼓を打つスタンスはバレエと似ておりとても親しみ易い。  両足を外股にしっかりと大地に広げバランスを保ち、  足腰を使い動かしながら打つ点にとても惹かれ、   打つ一瞬一瞬に造られる体の曲線の美しさは感動を与える。

「鼓童」 の名前の由来は心臓の「鼓動」 から来ているそうだ。  胎児が母胎というゆりかごの中で揺られながら感じとっている母親の鼓動は、 時には大きかったり早かったりしながらも安定感があり、  心が和らぎ落ち着くものなのだろう。  一種の子守唄かもしれない。例え音感が鈍くても、 人間誰でも体の底から自然に湧き上がるリズムを持ち合わせている。  リズミカルな曲が聞こえてくれば自然に体を左右に振り始めるのは、  昔母胎の中にいた時感じていた母親の鼓動を覚えているからかもしれない。  太鼓も同様、  その音と響きには我々体内の奥深くにずっと潜在し続けている懐かしさ、  親しみ、  そして安らぎがあり、世界共通しているのではないか。これは 「ガタン、 ガタンゴトン。。。」 と電車に揺られながら自然に気持ちよくウトウトし始めるのと同じかもしれない。

勿論ミスもたくさんすれば覚えるのが難しい練習もあるが、  皆で助け合いながら呼吸を合わせ太鼓を打ち始めると、  連帯感、  触れ合いと愛情を感じ、  自然に「和」も生まれてくるようだ。  新しい曲を習うのも面白いが、  私はクラスの前にやる基礎練習が大好きである。  単調だろうが、「ドーン、 ドーン 」 と皆と調和を保ちながら太鼓を打っていくと、  何か原始的で心打たれるものがあるのだ。そして最後に「ドーン」と打ち終え、その余韻の中に一瞬感じる安堵感に浸る。

去年のコロナ禍を始め、  人種問題や犯罪も毎日のように多く発生し続け、社会は怒り、憎しみ、悲しみに溢れている。  そんな落ち着かない不安な中にいるからこそ、  それらに立ち向かうかの如く、  両足をしっかり大地に付けながら打つ太鼓の響きと、  周りとの「和」は心を落ち着かせてくれ、何か希望さえも持たせてくれる。だから今日もバチを担いで打ちに行く。

板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。

板橋恵理のカリフォルニア人間観察(エッセイ一覧)

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