ロサンゼルス:嶋幸佑のアメリカ俳句鑑賞「バトン振る二世少女や独立祭」

嶋幸佑が選んだ今日のアメリカ俳句(2020年7月4日)

「バトン振る二世少女や独立祭」青砥疎影(ロサンゼルス)

今日はアメリカの独立記念日だった。いつもならパレードがあり、花火があり、人々はバーベキューで建国を祝うが、今年は新型コロナウイルス禍のため、各地の行事はキャンセルとなった。それで嗜好を変えて、せめて俳句で独立記念日の雰囲気を味わってもらいたいと、ロサンゼルスにある俳句結社「橘吟社」が出した二つの句集から、独立祭を詠んだ句を拾ってみた。

冒頭に置いた句は、その中でもかなり深みがある。日本からの移民の娘である日系の二世が、アメリカの独立記念日のパレードに出て、バトンを振っている。ブラスバンドの行進だろう。バトンを振るのはたいていが先頭を行く者だ。二世の少女が、おそらくアメリカ人のメンバーが揃ったブラスバンドの指揮を執っている。作者の感動が伝わってくる一句。

以下、独立祭の句を並べる。共感を覚える句があるだろうか。ちなみに、独立祭は、アメリカの俳人たちには夏の季語として受け入れられて久しいが、日本で発行されるほとんどの歳時記には入っていない。そのため「花火」や「月」を季語として詠んだ句があるが、そういう事情から、これらを季重ねと見る必要はない。

「揚花火夜空いろどる独立祭」浜中公代(ロサンゼルス)

「花火買うて子等待ち遠し独立祭」河原豊子(シアトル)

「警笛の今日かまびすし独立祭」三宅鈴子(ポモナ)

「老兵の分列式や独立祭」中村梅夫(東京)

「古馬車に星条旗立て独立祭」山根良山(ポートランド)

「夜の更けて尚花火鳴る独立祭」吉良比呂武(ロサンゼルス)

「独立祭来り炎暑の日々となる」向井ふさ江(サンディエゴ)

「月昇り独立祭の夜を照らす」中口飛朗子(シカゴ)

「建国の祝の花火国父塔」藤門松子(バージニア州)

「孫抱いて七月四日の花火見る」ホッヂドンキヨ子(マサチューセッツ州)

【季語】独立祭/花火=夏、「北米俳句集」(1974年、橘吟社刊)および「橘吟社創立六十周年記念句集」(1983年、同)より

嶋幸佑(しま・こうすけ)ロサンゼルス在住40年。伝統俳句結社の大手「田鶴」(宝塚市、水田むつみ主宰)米国支部の会員。ロサンゼルスの新聞「日刊サン」のポエムタウン俳句選者。

今から100年ほど前、アメリカに俳句を根付かせようと、農業従事者や歯科医など各種の職業に就いていた日本人の俳人らが、日本流の風雅を詠うのではではなく、アメリカの風俗・風土の中に、自分たちの俳句の確立を目指していた。

このコーナー「嶋幸佑のアメリカ俳句鑑賞」は、そうした先人の姿勢を、現在に引き継ぐ試み。今でも多種多様な職業の人たちがアメリカで俳句を詠んでいるが、それぞれの俳句の、いわゆる「アメリカ俳句」としての立ち位置も読み解く。

このコーナーへの感想は editor@culturalnews.com へ送ってください