Why Trump May Win the War Debate but Still Face Uncertainty in the Midterm Elections
The “Delayed Inflation Tax” and the Limits of Trump’s Kingmaker Power
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トランプはイラン戦争に勝っても中間選挙で勝てない?
「遅れて現れるインフレ税」とトランプ党候補の勝敗の不確実性
在米ジャーナリスト 髙濱 賛 (Tato Takahama)
Pacific Research Institute
2026年6月28日
ドナルド・トランプ米大統領の共和党内での影響力は、現代アメリカ政治でも例外的な強さを見せている。
2026年中間選挙を前に行われている共和党予備選では、トランプ氏が支持した候補が次々と勝利を収めている。共和党内の対抗勢力が「反トランプ」の旗を掲げても、多くの場合、MAGA(Make America Great Again)を支持する党員層の力を崩すことができない。
専門家の間では、現代の大統領の中で、ここまで党内候補者選びに直接影響を与える人物はいないとの見方が広がっている。
トランプ氏の推薦は単なる応援ではない。共和党予備選では、事実上の「党のお墨付き」として機能している。
その象徴となったのがケンタッキー州である。
共和党内でも異論を唱えることが多かったトーマス・マッシー下院議員は、トランプ政権との距離を置く姿勢が目立つ存在だった。しかし予備選では、トランプ氏の影響力を背景にした候補が勝利し、共和党内部で「トランプに逆らう政治家は生き残れない」という現実を示した。
またジョージア州などでも、トランプ氏が支持した候補が共和党の指名争いを制している。
これらの候補者に共通するのは、単なる保守派というだけではない。移民、国境管理、対中国政策、文化問題など、トランプ氏の政治路線に明確に寄り添っている点である。
ルイジアナ州の上院選でも、トランプ氏が支持する候補が共和党内の争いの中心となった。
ここで問われているのは、候補者個人の政策能力だけではない。「トランプ後の共和党を誰が代表するのか」という問題である。
なぜトランプ氏の推薦はこれほど強いのか。第一の理由は、共和党の支持基盤そのものが変化したからである。かつて共和党は、企業、外交、安全保障を重視するエリート保守政党だった。レーガン時代以来、自由市場、小さな政府、強い軍事力を掲げてきた。
しかしトランプ時代に入り、共和党の中心テーマは変わった。移民問題、国境管理、製造業回帰、対中強硬姿勢、そしてワシントンの政治エリートへの不信である。
トランプ氏は、これらの不満を結びつけ、従来の共和党とは異なる政治運動を作り上げた。
そのため共和党予備選では、「最も保守的な候補」よりも、「最もトランプ的な候補」が支持される傾向が強まった。しかし問題は、予備選で勝てる候補が、本選でも勝てるのかという点である。
共和党予備選の有権者は、共和党支持者の中でも特に熱心な層である。一方、本選では無党派層、穏健派、有権者全体の判断が加わる。
つまり、予備選と本選ではゲームのルールが違う。トランプ氏の最大の強みは、熱烈な支持者を動員できることだ。しかし同時に、その強烈な個性そのものが、一般有権者には制約として働く可能性もある。
最近の世論調査を見ると、その兆候は出始めている。2026年6月の複数の調査では、トランプ大統領の支持率は第二次政権で低い水準に落ち込んでいる。Marist調査では全体支持率は36%で、経済運営への評価も低迷した。
背景には、物価高、生活費上昇、外交政策への不安がある。ここで重要なのは、政治と経済の間には時間差があるということだ。2026年中間選挙の構図を複雑にしているのは、政治そのものではなく、経済の「遅行性」である。
ロサンゼルス・タイムズの分析(Los Angeles Times, June 27, 2026)によれば、仮にイラン戦争のような中東危機が収束したとしても、ガソリン価格や食料品価格は即座には下落しない。
エネルギー供給網の再調整、物流保険コストの正常化、原油市場の再均衡には時間がかかる。その影響は数カ月から年単位で続く可能性がある。
経済学者の間では、こうした現象は「遅れて現れるインフレ税(delayed inflation tax)」とも呼ばれる。戦争や供給ショックが終わっても、生活コストだけが遅れて残り続ける構造である。
これは有権者の政治評価を不安定化させる。その結果、中間選挙における最大の争点は、外交や安全保障ではなく、「家計コストの変化」という極めて日常的な評価に収束する可能性が高い。
これはトランプ政権にとって重要な制約となる。外交的勝利が、即座に政治的支持へ転換されるとは限らないからだ。確かにトランプ氏は共和党予備選では依然として巨大な力を持つ。しかし、その力が本選挙でそのまま通用するかどうかは別問題である。
共和党にとってもう一つの課題は、この経済的な「遅行性」の中で、政策効果を有権者にどう可視化するかという点にある。民主党はここに攻勢をかける可能性が高い。共和党候補を「トランプの候補」と位置づけ、生活費上昇と政権責任を結びつける戦略である。
もっともトランプ氏の党内支配力が衰えたわけではない。むしろ現在の共和党には、トランプ氏を中心とするMAGA勢力、新しい草の根運動、そして伝統的保守派という三つの流れが同時に存在している。
第一は、言うまでもなくMAGA勢力である。この勢力にとってトランプ氏は単なる党の指導者ではない。ワシントン政治への不信、国境問題、中国への警戒、文化的価値観をめぐる争いを結集する象徴である。
しかし第二の流れとして、MAHA(Make America Healthy Again)のような新しい草の根運動も台頭している。MAHAは単純な右派運動ではない。食品、医療、製薬、農業政策への不信を背景に、既存の巨大産業や制度そのものへの批判を強めている。
MAHAが問題にするのは、政府の大きさだけではない。「誰が政治を支配しているのか」「国民の健康や生活は誰の利益のために決められているのか」という問いである。この流れは、トランプ氏を支持しながらも、共和党の次の方向を模索する動きにつながっている。
第三は、伝統的な共和党である。企業、国際競争、安全保障を重視してきた旧来型の保守派は、トランプ氏によって大きく後退した。しかし消え去ったわけではない。むしろ本選では、この層や穏健派有権者の存在が重要になる。
一方、民主党側にも課題がある。近年、民主党内部では若い進歩派の影響力が強まり、医療保障の拡大、教育支援、富裕層への課税など、政府の役割を拡大する政策が注目されている。
もちろん現在の民主党全体が社会主義政党になったわけではない。しかし共和党側は、こうした動きを「急進的左派化」と位置づけ、2028年大統領選に向けた攻撃材料として利用している。
ここにアメリカ政治の複雑さがある。トランプ氏の支持率が低下しているにもかかわらず、共和党が依然として競争力を保つ理由の一つは、選挙が単純な「トランプ対反トランプ」ではなく、「どちらの方向に国を動かすのか」という選択になるからである。
キングメーカーとは、王を選ぶ者(本選に向けた共和党公認候補を選ぶ者)という意味である。トランプ氏はいま、共和党内ではまさにその存在になった。しかし、キングメーカーが選んだ候補が国全体の選挙で勝利できるかどうかは別問題である。
2026年中間選挙は、トランプ氏が共和党を支配できるかを問う選挙ではない。むしろ、トランプ氏が作り替えた共和党が、アメリカ社会の現実と接続できるのかを試す選挙になる。
その試金石となるのは、理念やスローガンではない。ガソリン価格、食料品価格、住宅費、医療費。有権者が日々の生活で感じる数字である可能性が高い。
トランプ氏はイラン戦争で勝利を収めたと主張し、その外交的成果を中間選挙での支持につなげようとしている。しかし戦争のつけはすでに暗い影を落とし始めている。
戦争が終わっても、物価がすぐに元に戻るとは限らない。政治的勝利と生活実感の間には時間差がある。
この「遅れて現れるインフレ税」こそが、2026年中間選挙の見えにくい主役になるのかもしれない。
参考文献
The Los Angeles Times, “Costs of Iran War Likely to Linger, Economists Say,” June 27, 2026.
Reuters, coverage of U.S. inflation, energy markets and Middle East risks, 2026.
The Wall Street Journal, coverage of oil prices, inflation and U.S. consumer sentiment, 2026.
Marist Poll, national survey on President Trump approval rating and economic evaluation, June 2026.
Pew Research Center, “Public Opinion and the 2026 Political Landscape,” 2026.
Council on Foreign Relations, analysis of U.S. foreign policy and domestic political effects, 2026.
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English Tralslation
Why Trump May Win the War Debate but Still Face Uncertainty in the Midterm Elections
— The “Delayed Inflation Tax” and the Limits of Trump’s Kingmaker Power
President Donald Trump’s influence within the Republican Party remains exceptionally strong.
Ahead of the 2026 midterm elections, candidates endorsed by Trump have repeatedly prevailed in Republican primaries, demonstrating his ability to shape the party’s future leadership.
Trump’s endorsement has become more than political support. Within Republican primaries, it functions as a de facto stamp of approval.
However, winning Republican primaries does not necessarily guarantee victory in the general election. Primary voters represent the most committed segment of the party, while general elections are decided by a broader coalition that includes independents and moderate voters.
The key challenge facing Trump, and the Republican Party is the gap between political achievements and economic reality.
A recent analysis by the Los Angeles Times (June 27, 2026) noted that even if a major Middle East crisis such as the conflict involving Iran comes to an end, gasoline and food prices may not immediately decline. Energy supply adjustments, shipping insurance costs, and global oil market stabilization require time. The effects may continue for months or even longer.
Economists describe this phenomenon as a “delayed inflation tax.” Even after the original shock disappears, consumers continue to feel the economic burden. This time lag can significantly influence voters’ political judgments.
As a result, the central issue in the 2026 midterm elections may not be foreign policy victories or national security achievements, but the everyday question of whether household costs are improving.
This creates a major political constraint for the Trump administration: a diplomatic success does not automatically translate into political support.
Trump remains a Republican kingmaker who can heavily influence who rises within the party. Yet the question remains whether candidates chosen by a kingmaker can win the broader national electorate.
At the same time, the Republican Party itself is changing. Three forces are competing within the party: the MAGA movement, emerging grassroots movements such as MAHA (Make America Healthy Again), and traditional conservatives.
MAHA represents a new challenge to existing institutions, questioning the influence of large industries in healthcare, food, and agriculture. It reflects a broader debate over who controls American society and whose interest’s government serves.
The Democratic Party also faces its own dilemma as progressive voices push for a larger government role in healthcare, education, and economic policy.
The 2026 midterm elections will therefore not simply be a referendum on Trump. They will test whether the Republican Party he reshaped can connect with everyday economic realities.
In the end, the decisive factor may not be ideology, but the prices Americans see every day at the gas station and the grocery store.
Note: This English translation has been prepared by the author, with assistance from translation tools where appropriate.
