Prime Minister Sanae Takaichi participated in G7 Evian Summit working dinner on June 15, 2026. (Photo Source: Prime Minsiter’s Office of Japan)

Transformation of G7 from Small, Trust-Based Forum of Western Leaders into More Formalized and Increasingly Fragile Institution
(English summary appears at the bottom of this post)

トランプ氏はなぜG7首脳を次々と怒らせるのか
同盟外交から「個人交渉」の時代に入った国際政治

在米ジャーナリスト 髙濱  賛 (Tato Takahama)
2026年6月16日

PACIFIC RESEARCH INSTITUTE―フランス東部エビアンで開幕した主要7カ国首脳会議(G7サミット)を見ていて、半世紀近く前の光景を思い出した。

筆者がG7を取材するようになったのは、ランブイエで始まったこの首脳外交の時代からである。それ以来、何度も現場で取材してきた。

現在のG7は、世界の主要民主主義国の首脳が一堂に会する巨大な国際会議である。しかし発足当初は、現在とはかなり性格が異なっていた。

1975年、フランスのランブイエで始まった第1回先進国首脳会議は、世界経済危機を背景に開かれた。石油危機、インフレ、不況。戦後経済秩序が揺らぐ中で、米国、英国、フランス、西ドイツ、日本などの首脳が集まり、率直な意見交換を行う場として構想された。当時のG7は、現在のように長期間かけて官僚が声明文を調整し、厳重な警備のもとで運営される儀式化された会議ではなかった。

少人数の首脳が夕食を共にし、夜にはワインやナイトキャップを片手に公式発言とは異なる本音を語る。そうした非公式外交の場だった。各国の利害は当然異なる。しかし、第二次世界大戦後の西側世界を支えてきた指導者たちには、「最後は直接話し合えば解決の道を探れる」という共通認識があった。

G7の原点にあったのは、制度よりも人間同士の信頼である。しかし半世紀後、その姿は大きく変わった。そして今、ドナルド・トランプ米大統領の登場によって、その変化はさらに鮮明になっている。

今回のG7で浮かび上がったのは、単なる首脳同士の不仲ではない。問われているのは、戦後西側外交を支えてきた「同盟」という概念そのものである。

もともと日本はG7の中心メンバーとして出発したわけではない。高度経済成長によって世界有数の経済大国となったが、安全保障面では米国との同盟に依存する国と見られていた。G7発足当初、日本の首相は欧州や北米に遠路参加しながらも、必ずしも中心的存在ではなかった。

経済面では日本の存在感は大きかったが、世界の安全保障や国際秩序を議論する場では、発言者というより参加者に近い位置づけだった。この状況を変えようとしたのが1980年代の中曽根康弘首相である。

中曽根氏は、G7を単なる経済会議にとどめるべきではないと考えた。日本にとって、世界の主要国首脳と安全保障問題を直接議論できる場は限られていたためである。東アジアの安全保障環境、日米同盟、冷戦構造の行方。経済力に見合った国際的役割を果たすには、政治・安全保障の議論に本格的に加わる必要があった。G7は日本が世界政治の一員として発言するための重要な舞台となった。

当時、首脳集合写真でどの位置に立つかさえ、日本外交にとって重要な意味を持っていた。それは単なる記念撮影ではなく、主要国の一員として認められているかを示す象徴的な外交儀礼だった。日本がG7の中で存在感を確立するまでには、こうした積み重ねがあった。

その後、G7は次第に拡大・複雑化した。世界経済に加え、安全保障、テロ対策、気候変動、中国問題、ロシア問題など、議題は広がった。首脳同士が率直に話し合う小さな会合から、世界秩序を調整する正式な国際会議へと変化した。

それはG7の成功でもある。しかし同時に、失われたものもあった。かつてのG7には、「相手は同じ西側の仲間である」という暗黙の信頼が存在した。意見が違っても、最終的には同じ方向を向くという前提である。

トランプ氏の登場は、その前提を揺るがした。トランプ外交の特徴は、国家間の制度的関係よりも、首脳個人との関係を重視する点にある。誰が自分に協力するのか、誰が政策に従うのかが判断基準となる。

今回のG7でも、それは明確に表れた。背景にある最大の問題は、米国・イスラエルの対イラン政策である。トランプ氏は同盟国に対し、米国の戦略への支持を期待した。しかし欧州諸国や日本は、軍事的関与には慎重だった。

その瞬間、それまで比較的良好だった関係にも亀裂が生じた。フランスのマクロン大統領はその象徴である。マクロン氏はトランプ氏と最も長く接してきた欧州首脳の一人であり、第1次トランプ政権時代には関係維持に努めてきた。

しかしトランプ外交の難しさは、個人的関係の良好さが必ずしも安定を意味しない点にある。ある日は最大級の賛辞を送り、翌日は個人的批判を加える。友好と対立が同時に存在する。

カナダのカーニー首相も同様である。当初は関係は比較的順調に見えたが、貿易問題や米加関係をめぐる対立によって急速に悪化した。

英国のスターマー首相も関係構築に力を注いできたが、対イラン問題での不一致が評価に影響した。

ドイツのメルツ首相も関係修復を試みたが、政策上の対立によって距離が生じた。

欧州で最もトランプ氏に近いと見られていたイタリアのメローニ首相でさえ例外ではない。つまり、今回明らかになったのは、「友人」という概念そのものが従来の外交とは異なるという点である。

日本も例外ではない。高市早苗首相は、安倍晋三元首相とトランプ氏の関係を念頭に、個人的信頼関係の構築を重視してきた。しかしイラン問題では、日本も米国の期待通りには動かなかった。

ここにもトランプ外交の特徴がある。個人的関係は重要だが、それだけでは十分ではない。政策上の不一致があれば、それは直ちに表面化する。

半世紀前、ランブイエで始まった小さな首脳会議は、世界政治を動かす巨大な舞台となった。日本もその過程で経済大国から政治的プレーヤーへと変化した。

現在、そのG7は新たな試練に直面している。

それはトランプ氏個人への対応にとどまらない。米国主導で形成された戦後秩序が21世紀にも機能するのかという問いである。

かつてG7を支えたのは、首脳同士がワインを飲みながら本音を語れる信頼関係だった。

中曽根氏はかつて筆者に「ベネチア・サミットでは、学生のような議論が深夜まで続いた」と語っていたことを思い出す。

今、その信頼関係は個人外交の時代に耐えられなくなっている。それはトランプという特異な政治家の登場だけによるものではない。

そこには、「民主主義国家ではない」という理由で国際枠組みの外に置かれながらも大国として存在し続ける中国、そしてかつてのような影響力は低下したものの依然として国際秩序に影を落とすロシアの存在も無関係ではない。

参考文献

  • 髙濱 賛『中曽根外政論――総理は何を目指しているのか』PHP研究所、1984年8月
  • 中曽根康弘『中曽根康弘が語る戦後日本外交』新潮社、2012年10月
  • CNN International, G7 summit coverage, June 15, 2026
  • Reuters, G7 summit analysis, June 15, 2026
  • The Guardian, G7 diplomatic coverage, June 15, 2026
  • The Washington Post, coverage of Trump and allied relations, June 15, 2026

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English Translation (Summary

This article examines the transformation of the G7 from a small, trust-based forum of Western leaders into a more formalized and increasingly fragile institution shaped by geopolitical tensions and personality-driven diplomacy.

Looking back to the origins of the G7 at the 1975 Rambouillet Summit, it notes that early summits were characterized by informal and candid exchanges among a small group of leaders who shared a basic assumption of Western cohesion and mutual trust. Over time, however, the G7 expanded in scope, agenda, and institutional complexity, gradually losing the intimacy and informality that once defined it.

The emergence of President Donald Trump represents a key turning point in this evolution. His diplomatic approach places greater weight on personal relationships with individual leaders than on institutional frameworks or traditional alliance mechanisms. As a result, interactions within the G7 have become more unstable, with cooperation and friction often occurring simultaneously in bilateral relations.

The article illustrates this dynamic through cases including France, Canada, the United Kingdom, Germany, Italy, and Japan, where leaders have experienced shifting relations with Trump depending on specific policy disagreements, particularly regarding Middle East and Iran-related issues.

Japan’s position is also examined, tracing its evolution from a relatively peripheral participant in early G7 summits to a more integrated political actor. This shift is attributed in part to the diplomatic initiatives of Prime Minister Yasuhiro Nakasone in the 1980s, who emphasized the linkage between economic strength and political and security engagement, thereby strengthening Japan’s role within the G7 framework.

Ultimately, the article argues that the G7 now faces a structural challenge that extends beyond President Trump himself. It reflects a broader erosion of the postwar Western alliance system, compounded by the rise of China as a systemic competitor and the continued geopolitical influence of Russia.

The central question is whether a system built on personal trust among leaders can remain functional in an international environment defined by strategic rivalry, institutional fragmentation, and shifting global power balances.

Note: English translation prepared by the author. Translation assistance tools may be used.