2014/ゲッティ美術館が写真家・杉本博司氏の代表的作品を展示、2月4日から6月8日まで

 

杉本博司氏が最近、博物館に寄贈した

Photogenic Drawings(フォトジェニック・ドローイング)シリーズから18点の写真を展示

 

杉本博司:Past Tense(過去形)

J・ポール・ゲッティ美術館(ゲッティセンター内)

201424日~68

ロサンゼルス-杉本博司氏(日本人、1948年生まれ)は1970年代半ばより、写真を使って、過去の歴史が現在にいかに浸透しているかを研究してきました。ゲッティセンターのゲッティ美術館では、生態のジオラマや蝋人形の写真、初期の写真のネガを素材にした「杉本博司:Past Tense(過去形)」を201424日から68日の期間にわたり展示いたします。この展示会では、さまざまな美術館のコレクションの中で歴史的・文化的に重要な意味を持つ被写体の作品群の3つをまとめて展示します。太古の昔のワンシーンやさまざまな場所を再現したり思い出させたりする対象物を写真に収めることによって、杉本氏は当たり前な創作手段の潜在性な可能性を見直して、歴史を正確に描写しています。

J・ポール・ゲッティ美術館のTimothy Pottsティモシー・ポッツ)氏は次のように説明しています。「今回の展示会では、美術館の多様なコレクションからの被写体を独創的に再構成している作品をお見せします。その中には当美術館が保有する、写真の黎明期からの広範な写真も含まれています。杉本氏は、最近発表したPhotogenic Drawings(フォトジェニック・ドローイング:光子的素描)シリーズより18の作品を寄贈されました。このシリーズはゲッティ美術館のコレクションであるWilliam Henry Fox Talbotウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット)による意義深い実験的作品の一部を自らの解釈で再現したものです」

杉本氏の精緻な職人的作品は、徹底した事前調査や大判カメラの使用、長時間露光といった厳密な制作方法の結果、生み出されたものです。各プロジェクトの背景には、一つのモチーフに対する持続的な探求があり、プロジェクトはしばしば何年にもわたって続きます。今回の展示会では、次の3つの作品群からのいくつかの写真を展示します。Dioramas(ジオラマ)(19751994年)、Portraits(ポートレイト)(1999年)、および最新シリーズPhotogenic Drawings(フォトジェニック・ドローイング)(2008年~現在)。

Dioramas(ジオラマ)

ジオラマは舞台設計家のJacques Louis Mandé Daguerre(ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール)(フランス人、17871851により、1822年にパリで初めて紹介されました。同氏は後に銀板写真法のプロセスを開発しました。最初のジオラマは、暗くした部屋で半透明のカーテン上の色つきの巨大な光景に天窓を開閉して光を照らし、ランプを常に動かしたりぼかしたりして動きを表現するというものです。20世紀初頭に自然史博物館で展示された古代の生息環境のジオラマは人気を博し、精密に再現された「自然」環境にいる生物たちが展示されました。

杉本氏は1974年にニューヨークに移住後、アメリカ自然史博物館にて、精巧な動物のジオラマと初めて出会いました。それから程なくして、個々の光景に自身のカメラの焦点を合わせるようになりました。各展示作品から説明的な文章を取り去ることによって、マナティ、ワピチ、アシカなどの動物がその自然の生息環境の中でそのまま生活しているような錯覚が強まります。各写真が経験豊かな自然写真家が捉えたありのままの瞬間のように見えると同時に、被写体は(実際に)永久にありのまま描写されています。

Wax Portraits蝋人形ポートレイト

蝋細工には長い歴史があり、現代の蝋人形館の歴史はフランスの彫刻家Marie Grosholzマリー・グロショルツ)(フランス人、17611850年)に遡ります。同氏は著名な政治家や文化人の蝋人形を制作し、パリのエンタテインメント業界で人気を博しました。1802年にロンドンに移った同氏は、マダム・タッソーという名の下で事業を立ち上げました。この事業は、依頼された人物の等身大の蝋人形の制作と展示を行うことを専門としました。

背景を真っ黒にした被写体を、昔の職人が肖像画を描いていた時代を思わせる方法でカメラに収めるという杉本氏の各作品は、9分間の露光で撮影されており、精密にモデル化された表情と豪華なコスチュームを生き生きさせています。これらの等身大の写真は、描写された本人が何度も模写されることによって、その本質が抽出された肖像を記録しています。ヘンリー8世とその妻の蝋人形は16世紀に描かれた肖像画に基づいて制作されました。また、ビクトリア女王の蝋人形は在位60周年を祝う式典時に撮影された1890年代の女王自身の写真を基にしています。

J・ポール・ゲッティ美術館写真部門のアシスタント・キュレーター兼展示会キュレーターであるArpad Kovacsアルパド・コバチ)氏は次のように説明しています。「杉本博司氏の写真技法は、19世紀に開発・完成された画像作成法の伝統に深く根ざしています。1世紀前の技法を採用し、過去からの瞬間を再現または模倣する被写体と構図にレンズを向けることによって、杉本氏は描き出される歴史的瞬間と自分自身を密接に結び付けているのです」

Photogenic Drawings(フォトジェニック・ドローイング)

William Henry Fox Talbotウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット)(イギリス人、18001877年)は1830年代初頭に、鉛筆を使わずに絵を描く試みを始めました。便箋の切れ端を食塩水と硝酸銀溶液でコーティングし、紙の上に木の葉とレースを置いて太陽光にさらすことによって、その形を映しだすことに成功しました。その後もカメラ・オブスクラで実験を続け、カメラの前身となるこの箱の中に1枚の紙を置き、光と影が反転した世界初のネガを作成したのです。タルボットはこれらの実験結果をフォトジェニック・ドローイングと呼びました。

杉本博司氏は2007年にJ・ポール・ゲッティ美術館を訪ね、当美術館のコレクションである最も初期の写真を研究しました。タルボットのフォトジェニック・ドローイングのネガのいくつかを撮影した後、杉本氏はサイズの大きなプリントを作成し、オリジナルのシートのしばしば明るい色を複製する過程において、調色剤でプリントに色をつけました。プリントを大きく拡大することにより、元の便箋の繊維が見えるようになり、画像の中に埋め込まれていた微妙で繊細なパターンを生み出します。

フォトジェニック・ドローイングシリーズの18点のゼラチン・シルバー・プリントが杉本氏本人から寄贈されたことで、当美術館が所有する同氏による作品のコレクションが拡大しました。一連のアプローチに根ざし、主に時の経過と表現手段との関連性を重視した杉本氏の写真制作手法は、若い世代のアーティストに重要な影響を与えてきました。今回のプリントはゲッティ美術館の現代写真コレクションを大いに拡大します。

杉本博司:Past Tense(過去形)」は201424日~68日まで、ゲッティセンターのJ・ポール・ゲッティ美術館で展示されます。本展示会はCenter for Photographs(写真センター)にて、ビクトリア時代の貴重なプライベート写真および公的写真を特集した展示会「A Royal Passion: Queen Victoria and Photography(ロイヤルパッション:ビクトリア女王と写真)」と同時開催されます。

また、杉本氏は25日に、自身の新作やフォトジェニック・ドローイングの作品について、ゲッティセンターで講演する予定です。