このオンライン・セミナーは、カルチュラル・ニュースの主催で2025年3月9日、午後7時(ロサンゼルス夏時間)からズームで行われました。
ロサンゼルスの日本人コミュニティの方々へ: 大火で被災された方々と、ともにあるために
For the Japanese community in Los Angeles: a note to be with survivors of the fire
葛西賢太 先生 Dr. Kenta Kasai
上智大学大学院実践宗教学研究科教授・グリーフケア研究所所員
Professor, Graduate School of Applied Religious Studies, and the Institute of Grief Care, Sophia University
話者 (葛西賢太先生)からのメッセージ
このたびの大火に被災された多くの方々、また親しい方が被災されたことを、ともに悼んでおられる方々に、お見舞い申し上げます。ロサンゼルスのカルチュラル・ニュース編集長のさんのお求めに応じ、グリーフケアについてお伝えいたします。グリーフとは(死別だけでなく)あらゆる喪失による痛みを指し、グリーフケアとは、グリーフを経験した方々がある程度は日常を取り戻していくお手伝いをする活動です(完全に元通りにする方法は、残念ながらありません)。
グリーフケア研究所について紹介させてください。2005 年4 月、107 名の方が亡くなるJR 西日本の脱線事故がありました。この事故の償いのひとつとして、同社の支援で設立されたのが、グリーフケア研究所です。グリーフケアを実践する人を2 年間(あるいは3 年間、4 年間)のコースで育成し、これまで千人近い方を社会に送り出しております。(https://sophia-griefcare.jp/)
お伝えすることは、グリーフケアのごく初歩です。本当は2年でも足りないのです。友人や隣人として被災された方に出会うその時に、心の専門家ではない(そして被災していない)市民は日常的にどのような接し方をすればよいのか、この点に絞ってくださいと、東さんは依頼されました。ですから、カウンセラーやサイコロジストが行うケアや、また各種のボランティアの活動にも、グリーフケアの理論にも触れません。また、災害によるさまざまな喪失の痛みに焦点をあてます。よりくわしく学びたい方は、研究所の公開講座や刊行物などもございます。
ごく基本的なことだけに絞ったこの資料が役に立つなら、どうぞ自由に配布してください。ただ、完全なグリーフケアの説明ではないので、誤解を生まないために、ぜひ、この「話者からのメッセージ」を切り離さずに配布してくださるようお願いします。
1. まず挨拶…care とは、気にかけること(Begin with “Hello”…To care is to concern about)
• 挨拶のもつメッセージ、力(The message and power of greetings)
• 挨拶だけなら毎日できる、その意義(you can say “hello” everyday, and keep in touch)
• 心から相手のことを思っていると意思表示(Way to show your serious concern)
2. 原状復帰はない(No restitution)
• 取り戻せない、どうにもならないという苦しみ(Confrontation of powerlessness)
• 時がたっても忘れることはない(We remember the loss forever)
アドバイスは難しく、危険(Giving advice is difficult and risky)
>「回復の段階」説には注意。回復せず取り残される人、置き去り感を味わう人。(Careful to the “recovery stage” theory. People may be left behind, materially or mentally.)
>「吐き出せば楽になる」?そんな簡単ではない。(Talking “therapy” may cause pain)
• 継続して関わる(Keep in touch)
• 一人でなく複数で(地域で、同僚と…)(network of the concerned: Local, Colleague…)
3. お相手への敬意、お相手の自己決定の尊重(Respect for them and their self-determination)
• 何かを強制することはできない(You can't force anything)
• 相手を変えようとしない。救いたい、癒やしたいという気持ちにはとくに注意(Do not try to change the other. Be aware your desire to save or heal them)
• 偉人の言葉や宗教の言葉などを借りない 本人の中から出てくるものだけ (Do not advice with words of great people. Only the person’s authentic might be effective)
• なにもできなければ、一緒に絶句し、一緒に悲しむ もちろん手伝えることがあれば(Nothing you can do for them? Just be at a loss and grieve with them)
• 悲しみの表現は多様。怒りであったり、麻痺であったり、抑鬱であったり。号泣困難も。 (Many ways to express grief. Anger, numbness, depression. Often it is difficult to cry)
4. より気にかけるのがよい方々(Additional concern to …)
• アルコール(その他のドラッグ)への依存は、再発・悪化することが多い(Addiction relapses)
• それまでの家族の課題などが露呈することも(Any problem in the family?)
• 病気をお持ちの方(People with illnesses)
• 妊婦・産婦(Pregnant women and new mothers)
4-1. ご高齢の方々(for Elders)
• こだわりやとらわれが強くなるかもしれない(They may become more obsessive or fixated)
• 安全や心身の状態に配慮(服装や髪型や化粧で見えるもの)(Care about their safety, physical and mental condition, by observing their clothes, hairstyle and makeup)
• 説得はできずとも、情報は提供する(No persuasion? At least provide them with information)
• ニーズに応える(Find and respond to their needs)
• 全依存させず、役割をお願いする意義も(Better to keep the elder’s independence and roles)
4-2. 子どもたち(For Children)
• 真実を伝える(Telling them the truth)
• 赤ちゃん返り(夜泣きやおねしょや甘え)も普通(Expect baby-like behavior as normal response: crying at night, bed-wetting, being clingy)
4-3. 支援をしている人(for Support Providers)
• 市や郡の職員、役職者や経営者、そして親など、「弱音を吐けない」方々への目配り、声かけ Keeping an eye on “responsible” people who can't afford to show weakness, such as city and county officials, managers, and parents
5. お会いする前に自分をととのえる(Tuning yourself before you meet them)
• 深呼吸して自分をリブート(再起動)する習慣(take a deep breath and rebooting yourself)
• 一人ではなく複数で関わる(Invite your friends, neighbors, or colleagues)
6.専門家でない人に私からお勧めできる資料
(日本語)
• デビッド・ロモ『災害と心のケア ハンドブック』アスクヒューマンケア、1995 年。
• 森田亜紀『グリーフとおよぐ』文芸社、2025 年。
• アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク,アメリカ国立PTSD センター「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2 版」兵庫県こころのケアセンター訳、2009 年3 月。http://www.j-hits.org/。(日本語版のpdf ファイルが無料でダウンロードできます)
(English)
• Psychological first aid: Guide for field workers ,WHO, 2011. https://www.who.int/publications/i/item/9789241548205
ロサンゼルスの日本人コミュニティの方々へ: 大火で被災された方々と、ともにあるために (PDF版)

