スティーブ鮫島さんの本:『天皇を救った男―アメリカ陸軍情報部日系帰米2世 伊丹明』

Tenno Sameshima Steve

『天皇を救った男―アメリカ陸軍情報部日系帰米2世 伊丹明』(南方新社)

本書は、ロサンジェルス在住のスティーブ・鮫島さんが、北加に住んでおられた伊丹君子夫人(故人)を再三訪れ、詳細にわたり聞き出した長編である。戦前の日系社会のことも綴られている。

出版元は南方新社で、2015年8月15日の終戦日に合わせ、日本で出版された。

内容は: ―戦後最大の謎・天皇の存続―

「極東軍事裁判(東京裁判)で天皇が戦犯として処罰されれば、日本は瓦解し、100万人の駐留軍が必要になる」とし、ワシントン政府は訴追を見送った。では、「誰がこの分析を導いたのか?」これについては、これまで日米関係の研究者でも明確にされなかった。この分析をしたのが、日系帰米二世の「伊丹明」だった。

ロサンジェルスで新聞記者をしていた伊丹明は、アメリカ陸軍情報部で暗号の解読や皇室典範などの文書翻訳と分析に携わり、戦後処理に於ける天皇および皇族について体系化した。

太平洋戦争で押収したあらゆる関連文書が、紛れもなく事実として天皇の名のもとに戦争が遂行されていることが示されており、天皇の戦争責任は逃れないと危機感を抱いた伊丹は、「天皇という核が日本国民から排除されれば、崩壊の一途をたどる」と、報告した。

また、情報部時代に、誰も解読できなかった「薩摩語」で行われた「日独秘密通信」を解読し、連合国のノルマンディ上陸を成功裏に導いた。

戦後、伊丹は東京裁判の言語裁定官として来日し、1946年8月には、ワシントンの陸軍省情報局(G2)での情報分析の功績により、リージョン・オブ・メリット勲章を贈られた。

伊丹明は、山崎豊子氏のベスト・セラー「二つの祖国」の主人公でもあるが、本書は、伊丹明のより多くの重要な真実を発掘し、全生涯を明らかにしている。