東北は、世界を呼んでいる

Cultural News 2012 03 March P1

カルチュラル・ニュース2012年3月号の付録(東 繁春から)

ロサンゼルスでも、東日本大震災は、いぜんとして、大きな関心事です。被災者のために、被災地の復興のために協力したいというひとがたくさんいます。ニュースを伝えることが仕事である私は、現場に行って、被災者に会い、今、何が、必要なことなのかを聞くことが、自分の仕事だと考えました。そして、震災1周年が来る3月11日より前に、東北に行きたいと思っていました。幸い、2月中に資金援助を受けることができ、3月1日から4日までの三陸取材が実現しました。

昨年4月16日から20日まで、東北取材をしていましたので、この10カ月での被災地の復興は、はっきりと目にすることができました。特に、陸前高田では、同じ場所を訪れることができました。ガレキはすっかり、片付いていました。陸前高田、そして南三陸町の歌津、志津川は、爆撃で町が跡形なくなったような状態でした。陸前高田の市役所跡地を訪れたのは、夕暮れでした。その時、明るいときには感じなかったことですが、たくさんの霊がただよっているように、感じました。

2月29日の夜11時30分に、東京・池袋から岩手県交通の夜行バス便「気仙ライナー」に乗って出発、3月1日午前6時には、JR気仙沼駅前に着きました。4日の正午に気仙沼駅を出発するまで、気仙沼ホテル観洋に3泊しました。3月1日は気仙沼市・本吉(けせんぬま・もとよし)の曹洞宗の僧・三浦賢道さん、2日は千葉県のパラリンピックキャラバンの中山薫子さん、3日は岩手県庁にお勤めの長谷川英治さんの車で、現地を案内していただき、被災地を見ることができました。長谷川さんには、昨年4月の岩手県内の被災地訪問でも、お世話になりました。

被災地の見学や取材は、現地の方の協力がないことには、なりたちません。今回、三浦さん、中山さん、長谷川さんの協力を得ることができたことに、あらてめて、感謝しなければならないと、強く感じています。

東日本大震災の中でも、町が壊滅している南三陸町(歌津、志津川)、本吉、気仙沼、陸前高田、大船渡を見て歩き、あらためて復興とは、何なのか、を考えました。三浦賢道さんのお父様、静涼院住職の三浦光雄(こうゆう)さんの話が三陸のようすをはっきりと教えてくれました。

光雄先生(64歳)が、中学生のころ、優秀な学生は、中学の卒業式が済まない前に、船に乗って、遠洋航海に出たのだそうです。そして、数回、遠洋航海をすれば、家が建つほどの金が稼げたそうです。それが、息子の賢道さんの時代になると、遠洋航海も、そして地元の漁師になる青年も、いなくなってしまい、インドネシアから漁師のなり手を呼んでいたのが、大震災前の三陸のようすでした。

東日本大震災の復興とは、震災前の状態に戻せばすむことではなく、人口の過疎化、高齢化、水産業で働くひとの減少といった問題を克服する町づくりが、必要であることが、わかってきました。それは、日本の縮図でも、あります。

地元の実業家は、どんなプランを持っているのだろうか、わたしの今回の東北取材で、まず、聞くべきことはそこにあるように思いました。気仙沼には、どんな有力企業があるのかを尋ねているうちに、阿部長商店(あべちょう・しょうてん)という水産加工会社の名前を地元の方から教えてもらいました。阿部長商店は、わたしが宿泊したホテル観洋も経営していました。ネットで阿部長商店のホームページを見ると、年商が連結で200億円と記されていました。オーナーの阿部泰浩氏にインタビューしたいと思い、会社に電話してみると、現在は、東京に居るということで、今回は、アポを取ることができませんでした。

3月5日以降、わたしが、ロサンゼルスに戻ってからのことですが、ネットの「ほぼ日刊イトイ新聞」を見ていて、気仙沼三菱自動車販売の千田満穂(ちだ・みつほ)さんを見つけました。気仙沼三菱自動車販売のコンテンツは、わたしが気仙沼に行く前から掲載されていたのですが、すっかり、見過ごしていました。やはり、現地に行ったあとでは、気づき方が違ってくるようです。

千田さんは23もの会社を経営される大実業家です。気仙沼三菱自動車販売はホールディング・カンパニーで、傘下に盛岡三菱自動車販売と宮城三菱自動車販売を持っておられ、その売り上げ合計は、80億円を越えています。「ほぼ日刊イトイ新聞」には、千田さんが震災後の6月11日に、気仙沼市内に40000枚配布をしたという、気仙沼の絵地図のことが紹介されていました。これを見たとき、わたしが、伝えなければならないことは、これだ、と思いました。さっそく、気仙沼三菱自動車販売に電話しました。意外に簡単に、千田さんと電話インタビューすることができました。

千田さんの気仙沼の絵地図は、三陸縦貫自動車道が具体化し始めた12年前に、初版が作られています。その当時、自動車道のルートは、大半がトンネルになると考えられていました。気仙沼の景観を見てもらうためには、気仙沼の湾のど真ん中に橋を架けたほうがいいと「気仙沼ベイ・ブリッジ」や「大島大橋」を書き込んだ絵地図を作ったのでした。

昨年6月11日に配布した第2版の絵地図(5ページに掲載)には「新しいまちづくりイメージ」として、津波被害を受けた地域では、外付けの避難階段の付いたビルが描かれています。そして防波堤は、まったく描かれていません。千田さんは「何年もかけて、長大な防波堤を築いたとしても、完成したとき、気仙沼の町に人が住んでいなければ、いったい、なんのための防波堤か、わからない」と言うのです。それよりも、津波の被害を受けた地域に、もう一度、住宅や商店を建てて人口を呼び戻すことが先決。津波対策は、ビルに避難すれば、いい、という提案なのです。

被災地復興の一番大事なことは、人口を減らさないこと、そして、人口が増えるような町つくりをすることにあることが、わたしにも、わかってきました。

昨年4月に、陸前高田で訪問した知的障がい者の作業所「あすなろホーム」のような存在が、実は、復興のために重要な役割を果たしていることが、わかってきました。(6ページに記事) あすなろホームは、高台にあったため、津波の被害からは逃れることができました。しかし、40人の作業者のうち半数が、津波で自宅を失いました。あすなろホームには寮はなく、震災以前は、作業者は自宅かグループホームから通っていました。陸前高田には、知的障がい者のためのグループホームが、全部で7カ所あったのですが、全部、津波で破壊されました。

あすなろホームでは、現在、作業者のためのグループホームを2棟建てる計画(計14部屋、総事業費7500万円)を進めています(昨年4月の段階では1棟でした)。昨年9月には、1棟の仮設ホームができました。そして、その仮設の隣接地に、2棟建てる用地の確保もできています。国の補助金で、建築費の大半は、まかなえるメドはついていますが、まだ、不足分を募金する必要があります。

3月11日の被災直後、家も仕事も、なにもかもを失った人にとっては、何から手をつけていいのか、わからない状態でした。その中で、あすなろホームのように、災害から残った建物があり、そこで、仕事ができることは、作業者だけではなく、その作業者の家族に立ち直りの手がかりを与えたのでした。つまり、作業者の家族は、まず、あすなろホームに通える範囲にある仮設住宅や、建物に住むことを決めたのでした。そして、住居が決まると、今度は、自分自身の仕事を探す余裕が生まれたのでした。

あすなろホームは、小さな存在です。そして、その作業者の家族の数も、数十世帯です。しかし、こうした小さなことの積み重ねが、災害からの立ち直りのプロセスであることが、今回、現地に行ってみてわかりした。

カルチュラル・ニュース3ページから5、6ページでは、今回の三陸取材で、お会いした方を紹介しました。そして、1ページと4ページでは、南三陸町で見つけた「南三陸 Minamisariku」というタイトルの、日本語と英語の観光ガイド・ペーパーからの転載です。

1ページの記事は、南三陸町の漁師、村岡賢一さんの近況で、ワカメの刈り取りやカキの養殖準備が始まったことを伝えています。また、1ページの最初の記事は、サンフランシスコの「日米ウィークリー」からの転載で、仙台に住む日系人が、アメリカに住む人々にたいして、宮城県に来るように呼びかけています。

カルチュラル・ニュースでは、6月7日から11日まで、石巻、南三陸町、本吉、気仙沼、陸前高田、大船渡を回る被災地体験ツアーを計画しています。陸前高田市観光物産協会では、震災語り部ガイドを用意するようになっています。ツアーは、被災地の方から体験を聞くことが中心のプログラムです。6月7日朝、東京集合で、6月11日正午に気仙沼で解散します。ロサンゼルスのひとを被災地を連れて行くことが目的ですが、日本からの参加も受け付けます。10人程度のツアーの予定です。石巻から小型バスを借り切って、4日間、被災地を回ります。費用・詳細、参加希望の方は、東まで(higashi@culturalnews.com

そして、このツアーに合わせてのカルチュラル・ニュースの東北取材と、取材記事を発表掲載するカルチュラル・ニュース7号のロサンゼルスでの新聞無料配布のための予算5000ドルの募金も呼びかけています。日本での送金先は、ゆうちょ銀行 口座番号 00220-0-45054 「カルチュラル・ニュース日本支局」です。ネットでは www.culturalnews.com/donation から送金することができます。問い合わせは、東まで(213-819-4100)

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