(カルチュラル・ニュース編集長、東 繁春)私は、1998年に英字新聞 Cultural News を発行し、ロサンゼルスで体験できる日本文化イベントと日本美術展を、多くの方に紹介してきました。20年以上、新聞を発行し続けていると、日本文化の様々な情報が入ってきます。
今回は、地元、パサデナのハンティングトン・ライブラリーで香川県丸亀市内に320年前に建てられた民家の移築工事が行われていて、5月19日に、上棟式が行われた話をお届けします。
ロサンゼルスの北方にパサデナという美しい都市があります。正確に言うと、このパサデナに隣接した場所に富裕層だけが住む小さなサンマリノ市があります。そしてこのサンマリノ市内にハンティングトン・ライブラリー・アート・コレクションー・アンド・ボタニカル・ガーデンズがあります。直訳するとハンティングトン図書館・美術館・植物園です。全部で200エーカーという広大な敷地です。比較のため、アナハイムにあるディズニーランドとカリフォルニア・アドベンチャーを合わせた敷地は500エーカーです。
20世紀の初頭、ロサンゼルスで電車を走らせ不動産開発で大成功したヘンリー・ハンティングトンは1903年に、サンマリノに土地を購入、この中に美術館や古文書図書館、植物園を作ります。1912年には、日本庭園を造りました。ハンティングトンは、自分の死後は、この敷地内の施設を一般に公開すること、という遺言を作り、1928年にハンティングトン図書館・美術館・植物園は、広大なキャンパスを持つ美術・博物館として一般に公開され、今日に続いています。現在の入園料金は、週日、大人25ドル、週末、大人29ドルです。
この広大なキャンパスは、地元では、ハンティングトン・ライブラリーを呼ばれていますが、直訳のハンティングトン図書館では、その実態が伝わりません。むしろハンティングトン・文化芸術・テーマ・パークと言ったほうが分かりやすいと思います。
ハンティングトン・ライブラリー・キャンパスの中でも、もっとも人気があると言われているのが日本庭園です。1912年から建っている日本建築や、その後追加された石庭、盆栽ガーデンがあります。2012年前後には、日本庭園100周年を記念して大規模な拡張・修復工事が行われました。この時、茶室が追加されました。
2000年からは、日本庭園の北側で広大なチャイニーズ庭園(流芳園)の計画が始まり、20年の歳月を経て、現在完成しました。この庭園は16・17世紀の明朝の宮廷庭園を再現したものです。ハンティングトン・ライブラリーでは、日本庭園とチャイニーズ庭園を合わせて、東アジア庭園と呼んでいます。
ハンティングトン・ライブラリーは、チャイニーズ庭園が完成したので、今後は、再び、日本庭園の拡張と日本文化プログラムの充実に力を入れています。現在行われているのは、香川県丸亀市に320年前に建てられた庄屋家屋の移築です。所有者は横井家19代の横井昭(よこい・あきら)さんです。横井昭は1960年代の日本経済の高度成長期に松下電器に入社、アメリカ松下電器の重役を務めた方です。ニューヨークに駐在していたところ、松下電器のユニバーサル映画社の買収(1991年から1996年)で、松下電器の責任者としてロサンゼルスに転勤しました。横井昭さんは、ロサンゼルスで松下電器を定年退職、その後ワーナー・ブラザーズ映画会社で仕事をしますが、現在は、映画会社の仕事も引退して、映画技術のコンサルタントです。
ハンティングトン・ライブラリーには、同財団理事たちで作る庭園委員会があり、この委員会が日本から本格的な民家を移築するための調査活動を行っていました。ちょうど、その時、横井昭さんとハンティングトン財団の理事の一人との偶然の出会いがありました。
アメリカ生活が長く、ロサンゼルスを生活の場所に決めた横井昭さんは、丸亀の実家家屋をどう処分しようかと長年考えていました。1年に1回は家屋のメンテナンスのために、丸亀に帰っていました。2016年3月、丸亀に帰ることを、偶然に、ハンティングトン財団の理事をしている人に話したことから、移築の話が進み、2019年1月には、横井昭さん所有の家屋をハンティングトン・ライブラリーに寄贈することが確定しました。この時、ハンティングトン・ライブラリーが発表した総事業費は9ミリオン(約9億円)でした。
その後は、丸亀の横井邸を解体し、松山市内で、部材を米国へ送るための準備作業が行われ、2020年には、横井邸移築の部材がハンティングトン・ライブラリーに届きます。コロナ感染で、日本の職人の派遣が遅れていたのですが、3月初めに四国から現場監督1人と大工3人が到着、検疫隔離期間を終えて、3月後半から移築再建工事に入っていました。5月19日の上棟式では、ハンティングトン財団の理事や移築プロジェクト関係者たちが招待されました。パサデナにある神慈秀明会の今井ユージーン先生によって神事が行われました。この上棟式のようすは、今週の Cultural News に掲載しましたので、これを機会に Cultural News を購読してください。
ハンティングトン・ライブラリーでの横井邸移築・再建工事は、11月末で、母屋工事が完了し、その後、邸内の日本庭園の造作が行われます。横井邸の一般公開は、今のところ、2022年秋と発表されています。
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Contents of Weekly Cultural News, June 07 - 13, 2021
P01: Huntington Library reconstructing 320-year-old house form Marugame, Kagawa Prefecture in its Japanese garden
P02: Huntington Library reconstructing 320-year-old house form Marugame, Kagawa Prefecture in its Japanese garden
P03: Huntington Library reconstructing 320-year-old house form Marugame, Kagawa Prefecture in its Japanese garden
P04: Japanese Percussion Lesson #51: Kabuki Hayashi vs. Hogaku Hayashi
P05: Japan House “RECONNECTING: A vision of Unity by Kengo Kito
Ad: Uyehara Travel provides 7th Worldwide Uchunanchu Festival tour in Oct. 2022
P06: A Little Tokyo resident is the winner of the 8th annual Little Tokyo short story contest
P07: US Postal Service issues Go For Broke: Japanese American Soldiers of WWII stamp
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英字新聞 Cultural News は、2020年3月までは月刊タブロイド版で発行していましたがコロナ感染でロサンゼルスだけではなく、アメリカ全土で美術館や文化センターの活動が閉鎖となったため、2020年6月からオンラインの日本文化イベントを紹介する週刊ニュースレターとして生まれ変わりました。2021年4月からはワクチン接種が行きわたり美術館も再開されてきたので、再び、日本美術展を紹介しています。カルチュラル・ニュースの出版・発信の活動を応援するための非営利団体カルチュラル・ニュース協会が2019年3月に設立されました。アメリカの中の日本文化を発展させる活動にご援助ください。寄付の送り先は、カルチュラル・ニュース協会です。