2011/日本は武器で儲ける国になるべきではない(大前イノベーション)

 

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大前研一イノベーション講座◆発行 2011.12.16

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軍事産業は禁断の実

短期的にはともかく、長期的には日本に致命傷をもたらしかねない

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【1】 今週のイノベーションの「種」

『武器輸出三原則の緩和を打ち出した民主党』

【2】 大前学長 イノベーションコラム

『「武器輸出国」となった時、日本は幸せか』

【3】 What does this all mean?~要するに何なのか?

『いま武器輸出三原則を緩和することを危惧する』

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【1】今週のイノベーションの種

『武器輸出三原則の緩和を打ち出した民主党』

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政府は11月28日、武器輸出三原則の見直しに関して、外務・防衛両省の副大臣らによる検討会議の初会合を開きました。

これは武器輸出三原則の緩和を打ち出した民主党の要請を受けたもので年内にも取りまとめをめざす考えだといいます。

武器輸出三原則の見直しは、民主党の前原誠司氏らがかねてから熱心に主張していた事項です。

自民党の考え方は「来るべき日」に備えていかに高価でも国内に防衛産業を温存しておくことでしたが、民主党がそれを一歩進めて「意味がある」程度までこれを伸ばしていこう、というものです。

野党であったときの民主党は社会党、社民連、民社党などの流れを汲(く)んでいたので、自民党よりもはるかに「武器輸出三原則」堅持の立場をとっていると思われていました。

大前研一学長は、武器輸出三原則を緩和する方向性こそが、「民主党の染色体を知る上では、かなり重要なリトマス試験紙に対する反応である」と考えています。

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【2】大前学長  『イノベーション・コラム』

『「武器輸出国」となった時、日本は幸せか』

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私が懸念するのは、ここで武器輸出三原則が緩和されると、「これで景気が回復する」とばかりに国内の防衛産業がいっせいに軍需に目を向けるのではないか、

それは短期的にはともかく長期的には日本に致命傷をもたらすのではないか、ということである。

「メイド・イン・ジャパン」の防衛関連品は性能こそ優れているだろうが、実戦経験はない。一般に武器というものは、実戦に裏打ちされた歴史や信頼性がものを言うから、武器輸出三原則の緩和によってすぐに日本の武器が世界で買われることはないだろう。

しかし、明確な目標が与えられた時の日本の技術力の高さは世界に冠たるものがある。もしかしたら、実戦経験の少なさをカバーしてしまうほど性能に優れた武器を日本は作り出してしまうかもしれないのだ。

その可能性はゼロとは言えない。

あたかも1980年代の日本の自動車産業が、米国の自動車生産拠点であるデトロイトを壊滅に近い状態まで追い込んだようにである。

さてそうなった時、日本にとって幸せなことと言えるだろうか。

昭和初期、日本が急速に軍国主義化していったあの不幸な時代が繰り返されてしまうのではないか。

そう考えると、私は言葉を失ってしまう。

日本が武器輸出で儲けるような国にはなってほしくない、と私は願っている。

他国の復興支援や経済援助などを通じて日本国内経済の活性化を図るような「WIN-WIN」の関係を模索する国であってほしいと考える。

先に「明確な目標が与えられた時の日本の技術力は高い」という主旨のことを書いた。

しかし一番怖いのは、目標を達成することが最優先され、それによってタガの外れてしまう日本という国なのである。

このことを民主党および政府、そして外務・防衛両省は肝に銘じていただきたい。

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【3】What does this all mean?~要するに何なのか?

『いま武器輸出三原則を緩和することを危惧する』

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現在の日本が置かれている厳しい経済状況、そして武器輸出三原則の見直しということになると、昭和初期の日本の姿と重なって見えてしまいます。

そして、「同じ轍だけは踏んでほしくない」と強く願わずにいられません。

雇用とか産業のために防衛産業を強化する必要があるのでしょうか。

日本の国力を示すのであれば、それに代わる産業は日本にいくらでも存在します。

雇用を増やしたいのであれば、防衛産業以外の分野を強化すべきでしょう。

その辺りは「雇用の創出」という耳当たりのいい言葉に誤魔化されずに、冷静に判断してもらいたいものです。

また戦前の日本を振り返ってみるべきでしょう。

当時の政府は、不景気の日本全体を覆っていた重苦しい雰囲気を払拭しようと、武器増産に力を入れました。

そして産官学共同で武器を作って売りまくりました。

結果確かに産業を振興させ、雇用を生み出しました。

しかし日本は、何かにつけやり過ぎる傾向があります。

日本が死の商人になっていったのも、また第二次世界大戦に突入していったのも、日本人のそういう特性があったことは否定できません。

日本国内はいま、不景気です。

一方、中国は勢力を増し、日本を見下すかのように威圧的な態度を示してきています。

状況だけ見れば、第二次世界大戦へと進んだかつての日本に似ていなくもありません。

もしここで武器輸出三原則を捨ててしまえば、これから日本は死の商人への道を進むかもしれません。

このタイミングで武器輸出三原則を緩和することが危惧されます。

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【今週のポイント】

・政府は、武器輸出三原則の見直しに関して、緩和する方向性で見直す検討会を開いた。

・現在の日本が置かれている厳しい経済状況、そして武器輸出三原則の見直しということになると、昭和初期の日本の姿と重なって見えてしまう。

・日本が武器輸出で儲けるような国にはなるべきでない。

雇用を増やしたいのであれば、防衛産業以外の分野を強化すべき。

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いかがでしたでしょうか。

戦前、日本が死の商人になっていったのも、また第二次世界大戦に突入していったのも歴史的事実です。

歴史に学ぶと、戦前の政府が武器増産に力を入れたことが、産軍共同体を暴走させた推進力となったことが分かります。

当「イノベーション講座」では、この推進力を「FAW=Forces at Work」と呼んでおり、FAWを先読みに使うトレーニングをします。

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