リトル東京歴史協会が主催する「リトル東京ショーストリー・コンテスト2017年」は、英語・日本語合わせて約60点の応募がありました。このうち、日本語の作品は8作品で、この中から、最優秀作、森マサフミ「巻きすの神様・ The God of Sushi Mats」、佳作3点、鶴亀彰「ジーチャンのアイラブユー」、石井義浩「お正月in リトル東京・物語、堀越海 「ナカジマさん」が選ばれました。
日本語ストーリーの審査員:半田俊夫=はんだ・としお(元パイオニア・センター会長)、渡部宏樹=わたべ・こうき(南カリフォルニア大学大学院生・博士課程)、金丸智美=かねまる・ともみ(日刊サン編集長)、東繁春=ひがし・しげはる(カルチュラルニュース編集長)
コンテストの優秀作の発表と作家の紹介が、4月20日夜、リトル東京の日米文化会館のガーデンルームで行われ、英語優秀作Elizabeth Farris 「Unspoken」、日本語優秀作・森マサフミ「巻きすの神様・The God of Sushi Mats」、英語ユース部門優秀作Madeleine Chou & Jamie Hen 「To Walk the Path of Memories」が朗読されました。
また、「巻きすの神様・The God of Sushi Mats」は、Tifany Tanaka によって英訳され、会場で英訳テキストが配布されました。
優秀作3点は、羅府新報に掲載されます。また、優秀作と佳作は、全米日系博物館のウエッブサイト「Discover Nikkei」 www.discovernikkei.org とリトル東京歴史協会のウエッブサイト www.littletokyohs.org に掲載されます。
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森マサフミ「巻きすの神様・ The God of Sushi Mats」 リトル東京で55年にわたって寿司屋を開いていたトミオが引退のため、最後の営業する日、「巻きすの神様」が現われて、トミオの願いをかなえる。すると、リトル東京の飲食店の光景が突然変わってしまう。
作家(翻訳家・森マサフミ)コメント 大好きなリトル東京と寿司のことを書いたもので賞をいただき、感激です。これを機に、より多くの方たちがリトル東京を楽しんでいただければ幸いです。
鶴亀彰(つるかめ・あきら)「ジーチャンのアイラブユー」 83歳の鹿児島出身の庭師・源蔵は、自宅風呂場でストロークをおこし、危篤状態に。そのとき、脳裏によみがえってきたのは、初孫ナンシーが幼かったころの思い出。、
作家(元旅行会社経営者・現在は引退・鶴亀彰)コメント 米国生活も50年になりましたが、その間、リトルトーキョーはいつも私の心の故郷でした。そこで出逢った人々への感謝の思いを込めて実在の人物をヒントにフィクションとして書かせて頂きました。
石井義浩(いしい・よしひろ)「お正月in リトル東京・物語」 現在は、すっかり年中行事として定着している「お正月inリトル東京」イベント。この恒例行事の始まりは、1999年元旦。そのイベントを始めた人物はどんなひと。いったい、何がきっかけだったのか。
作家(ブリッジUSA社長・石井義浩)コメント 初めての短編小説がファイナリストに選ばれて光栄です。今回の作品は現在も続いているリトル東京のビッグイベントの歴史を残す意味で書きました。
堀越海(ほりこし・かい) 「ナカジマさん」 主人公は、リトル東京で会ったナカジマさんに、強烈な感情を抱いた。その出会いは突然で、その後、二度と作者はナカジマさんに会うことはなかった。
作家(アーバイン在住の高校生・堀越海)コメント キルケゴールは「真理をめぐる重要な点は、それを求めることにあるのではなく、その探求の過程にある」と言った。その言葉を念頭に置きながら僕はこの小説を書いた。それがノミネートされた事実だけでも極めて光栄なことだと思う。ささやかな自己表現の発露として、これからも時間の許す限り小説を書いていこうと思う。
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リトル東京ショートストーリー・コンテスト2017年を思う
By 関サニー三脚 (リトル東京ショートストーリー・コンテスト2017年の日本語部門の世話役)
このコンテストを見ていて例年思うことは、一等になる作者がリトル東京に来たことも、住んだこともない人達が多いという現象です。確かここ数年、英語部門の優勝者は日系人ではなく、カリフォルニア州外に住んでいたり、今回は、現在、ニュージーランドに住んでいるエリザベス・ファリスさん(その前はテキサス在住)でした。日本語部門でも、2年前、北海道に住んでいる女性が優勝しました。
それぞれが日系史や小東京の様子、地図など詳しくネットで調べ、日本人の思考法、文化形態、人間関係などを熟知したうえでストーリーに仕立てています。今回の英語部門優勝者、ファリスさんの「Unspoken」が描いた「生け花」への造詣も、一般的日本人の理解を越えています。リトル東京歴史協会の理事のひとり、ビル・渡辺さんが言っていましたが、「文章を読んでいる限り、てっきり日系人が書いたとしか思えなかった」のも無理ありません。
回りくどい言い方になりますが、ただ(ノホホンと)日本人だ、日系人だ、という人よりも、「日本人的立ち居振る舞い」を学び、日本(日系)への「思い入れ」があるアウトサイダーの人の方が、すばらしい感動を呼ぶ物語をモノにできるような気がします。