2016年9月15日、五百羅漢バッハ・コンサートの記録 (2)

Gohyaku Rakan Back Concert Fumonji Rikuzen Takata

<五百らかん・バッハの会通信 第3号 2016年11月から>

2016年9月15日・午後4時から 午後9時・陸前高田・普門寺

梶岡 秀 (かじおか・ひでし) 五百らかん・バッハの会 代表者

午後4時過ぎ小松智佳子さん、梅村真美さんが宮古市から御両親と一緒に車で来訪され、普門寺にお借りした控室で準備に入る。また、盛岡市から長谷川・夫妻も車で来訪され、受付の準備に協力いただく。

5時ごろ雲行きあやしくなり、雨の場合も想定し、本堂入り口での演奏を検討した。しかし、何時の間にか厚い雲が薄れてきた。しばらくすると開場時間が近くなり、参加される方が来訪され始めた。岩谷さんが山際から薄雲を通して中秋の名月が出ていることに最初に気づく。皆、名月を見て奇跡だと喜んだ。

この時間帯に、昨年と同様今回も地元新聞の東海新報社、と岩手県をカバーしている岩手日報社、河北新報社より取材を受ける。また、今回はNHK盛岡のTV取材もあった。段々と暗くなり、薄明かりの中で、受け付けでは参加された方に芳名簿に記帳いただいたり、蝋燭を手渡したりで忙しくなる。

写真 6 = 陸前高田・普門寺の境内から見る。中秋の名月が昇る。

写真 6 = 陸前高田・普門寺の境内から見る。中秋の名月が昇る。

写真 7 = 陸前高田・普門寺の境内から見る。古杉の間から月明かりが洩れる。

写真 7 = 陸前高田・普門寺の境内から見る。古杉の間から月明かりが洩れる。

午後7時半、すっかり暗くなり、木漏れ月光が極わずかに届く中、バイオリン演奏者の小松智佳子さんがバイオリンを携えて舞台に静かに現れて、バッハ無伴奏バイオリン曲を奏で始めると、パルティータ第1番・第1楽章のバイオリンの音色が静かに響き渡ってくる。

第2楽章の演奏を終えて智佳子さんが舞台から降りると、梅村真美さんがバイオリンを携えて舞台に現れ、第3楽章を奏で始める。

写真 8 =バッハ曲バイオリンの響きを五百羅漢と参加者に届ける。

写真 8 =バッハ曲バイオリンの響きを五百羅漢と参加者に届ける。

写真 9 = バッハ曲バイオリンの響きを五百羅漢と参加者に届ける。

写真 9 = バッハ曲バイオリンの響きを五百羅漢と参加者に届ける。

今回の演奏に対して、小松智佳子さんは「第1回の演奏中は五百羅漢、一体一体に込められた思いや、聴きに来て下さった方からの想いが、私の胸に伝わってきた。そこには、東日本大震災で亡くなられた方の魂のかたまりのようなものがあるように感じた。第2回目となる今回も、音に思いを込めて演奏したいと思います。」と思いを語り、梅村真美さんは「月夜の晩に夜風に吹かれながら石仏に向かってバッハのソナタの1番を演奏するということは、私の人生にとっても意味深いものでした。今年も鎮魂の祈りを込めて演奏します」と思いを明らかにされていたが、二人それぞれの思いがバイオリンの響きとなって、月光と蝋燭の明かりに照らされた五百羅漢に沁み込み、五百羅漢を包む新羅万象と共鳴し、そして、人々にも鎮魂の祈りと希望の響きが伝播しているように感じられた。

写真 10 = 演奏中の小松智佳子さん。

写真 10 = 演奏中の小松智佳子さん。

写真 11 =演奏中の梅村真美さん。

写真 11 =演奏中の梅村真美さん。

“無伴奏バイオリンは、バッハが 持てる全ての音楽技法の奥義を使いきり、「人間の感情」 「森羅万象」 「宇宙の真理」 などを これ以上ないぐらい簡潔に表現した、究極、至高の作品だ” とも、“小さな楽器のバイオリンたった一台のために書かれた曲集であって、鍵盤楽器の伴奏も何も有りません。それが、大編成の声楽曲や交響曲にも負けないほどの大きな音空間を創り上げます。それは正に宇宙的なまでの広がりを持っています” とも言われているが、鎮魂の祈りと未来へのメッセージを込めて奏でられたバッハのバイオリンの響きは、普門寺・陸前高田から宇宙にまで響き渡っているように感じた。

このバイオリンの響きに包まれている時に、思い出したことは、数年前の中秋の名月の夜、島の丘に登って、月の光が瀬戸内の海面・島々・山々に降り注ぎ、新羅万象が淡い銀色に包まれる中、CDでバッハ無伴奏バイオリン曲の響きを聞いた時、大自然・宇宙との一体感を感じたことだった。

人々の想いが込められた一体一体の五百羅漢という特別な対象、五百羅漢を自然で包みこむ普門寺境内という特別な場所、中秋の名月という特別な時間、バッハの究極・至高の作品といわれる特別な曲、これらに相応しい演奏者の願いと祈りが込められた素晴らしいバイオリンの響きにより、言葉では表現できないような深い感動が引き起こされたのだと理解すると共に、正に今、本10年企画が目指していた状況が実現化していることに感激した。

写真 12 =普門寺の五百羅漢と参加者をバイオリンの響きが包む。

写真 12 =普門寺の五百羅漢と参加者をバイオリンの響きが包む。

写真 13 = 普門寺の五百羅漢と参加者をバイオリンの響きが包む。

写真 13 = 普門寺の五百羅漢と参加者をバイオリンの響きが包む。

梅村真美さんの演奏が終了した後、小松智佳子さんと梅村真美さんに、心に深く残る素晴らしい演奏に対して謝意を表し、来年の演奏をお願いし、了解を戴いた。

受付台、演奏台、砂袋など来年も使用できるように整理して倉庫に片付けた後に、倉庫鍵の返却と全面的にご協力いただいたことに対してのお礼を伝えるために普門寺庫裏に伺った。熊谷住職ご夫妻より「ご家族や友人を失った方で、五百羅漢彫りに参加されている方がたくさんいらっしゃっていました。NHKインタビューを受けた女性の彫られたコーヒーカップの羅漢さんが羅漢第1号ですよ。」と教えていただいた。このことを伺った時、正に10年企画を立てた時の目的が実現されているとうれしくなった。また、来年第3回目開催にむけてのエネルギーを戴けたように思った。

誰もいない静かになった境内は、中秋の名月の光も杉の大木の木立に遮られ、五百羅漢も暗くてはっきりとは見えなくなったが、その存在感は今回も強く感じられた。来年の中秋の名月の夕べにバッハ無伴奏バイオリン演奏を捧げることを約束し、岩谷さんと二人で普門寺を後にした。

写真 14 = 長谷川さん夫妻の制作によるコーヒーカップ羅漢とカメラ小僧。

写真 14 = 普門寺に置かれた羅漢像1号の「コーヒーカップ」羅漢(右)と盛岡の長谷川夫妻の制作による「カメラ小僧」羅漢。

謝辞=多くの方々からご協力いただき、そのお陰により第2回目の催しを成功裏に終えることができました。ここで深くお礼を申し上げます。

写真を提供戴いた普門寺の熊谷住職(写真6-13)、受付・後片付けなどお手伝い戴いた長谷川さん夫妻、初から最後まで協力いただいた岩谷和夫さんに感謝の意を表します。

併せて、案内チラシ配布にご協力いただいた普門寺の熊谷住職、あすなろホーム施設長・西条一恵さん、ジャズタイム・ジョニー店主・照井由紀子さんに感謝の意を表します。

五百らかん・バッハの会 代表者 梶岡 秀
電話:0823-66-2653 携帯 080-6317-7278
メールアドレス: h-kajioka@akinada-hiroshima.jp
広島県呉市豊町久比 2304-3