2015/ロサンゼルス・カウンティー美術館で「楽焼展」、3月29日から6月7日
「樂 - 茶碗の中の宇宙」展 3月29日からロサンゼルス・カウンティ美術館で開幕
国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)と樂美術館は、米国西海岸で随一の規模を誇るロサンゼルス・カウンティ美術館において、樂焼450年の粋を集めた展覧会「樂-茶碗の中の宇宙」を開催します。
16 世紀後半に樂家の祖、長次郎によって始められた樂焼は、樂家十五代により焼き継がれ、日本の陶芸の中でも他に類例を見ない独特の美的世界を作り上げています。
本展覧会では、樂家歴代の作品、本阿弥光悦の作品に加え、当代(十五代)樂吉左衞門の多様な活動および次世代の作品を紹介することにより、それぞれの時代感覚を反映させながら、独自の美を追求してきた樂焼の美的精神世界を通観いたします。
千利休による「わび」茶の思想の最も直接的な反映とされる長次郎のモノトーンの静けさに沈む茶碗、当代吉左衞門の個性的で革新的な作品などあわせて94 点の作品を紹介する本展は、米国初の本格的な樂焼展として大きな注目を集めるものと期待されています。
なお本展はロサンゼルス展の後、内容を一部変更して、ロシアのエルミタージュ美術館、プーシキン美術館へ巡回いたします。
【会期・会場】: 2015 年3 月29 日(日)~6 月7 日(日)、ロサンゼルス・カウンティ美術館
【主催】: 独立行政法人国際交流基金、公益財団法人樂美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館
【企画協力】:京都国立近代美術館
【協力】: 日本航空株式会社
【展覧会専門委員会】: 林屋晴三(頴川美術館理事長、東京国立博物館名誉会員)赤沼多佳(三井記念美術館参事) 伊藤嘉章(東京国立博物館学芸企画部長)樂吉左衞門(樂家15 代当主、樂美術館理事長・館長)
【キュレーター】: 松原龍一(京都国立近代美術館学芸課長) ロバート・シンガー(ロサンゼルス・カウンティ美術館キュレーター)
【巡回先】:○サンクトペテルブルク 2015 年7 月11 日(土)~9 月6 日(日)エルミタージュ美術館 ○モスクワ 2015 年9 月22 日(火)~11 月15 日(日)プーシキン美術館
樂吉左衞門のステートメント
樂焼は16 世紀創設以来450 年の歴史を経て、今日に伝えられてきた日本独自な陶芸文化です。初代長次郎から15 代にわたる樂歴代の伝えた伝統の精神は、それぞれの時代を生きる創造的な営みそのものでもあります。
小さな手のひらに収まる茶碗という限られた造形世界の中に、自然との深い関わりを探求し、意識あるいは人為と自然、偶然性と必然、部分と全体、完と未完、充足と不足、など哲学的な思索、宇宙観と言うべき造形を追求してきました。
それはブラックホールのような無窮の宇宙から、谷川の幽かなせせらぎに至るまで、茶碗の内側は将に手のひらに広がる「茶碗の中の宇宙」と言えましょう。それは古い価値の継承ではなく、まさに現在進行形の現在性を生きるアヴァンギャルドな取り組みと言えます。
樂茶碗の中に秘められた思想性は、将に現代思潮とも響き合うものであり、おそらくアメリカはじめ世界におおきな意味をなげかけるものでしょう。
今回の展覧会は重要文化財、重要美術品を含み、樂歴代作品を中心に、現代を生きる「樂」として、私こと十五代吉左衞門、さらに「受け継がれる未来」として、近い将来十六代を継承することとなる樂篤人の仕事を含め展観いたします。
出品作品の多くは京都、樂美術館から出品されています。樂美術館は昭和53 年、十四代樂覚入によって設立、450 年にわたって樂焼の伝統を伝えてきた樂家に伝来した歴代作品や資料、関係茶道美術品が寄贈されました。
樂美術館のコレクションは永き歴史の中、樂歴代と共に今日に伝えられ、また歴代の制作の糧とされてきた作品でもあります。歴代はこれらの名品から学び、伝統の本質を理解し、また新たな挑戦を通じて自らの造形世界を作り上げてきました。まさに樂美術館は樂焼450 年のエッセンスが詰まっている美術館と言えます。
本展はこれら樂美術館のコレクションを中心に、重要作品を所蔵する他美術館、また、茶の湯の創始者の千利休の子孫であり茶の湯文化を今日に伝える表千家、裏千家からも出品されるという日本国内でも滅多に見られない充実した展観内容となっています。
今回の展覧会を通して、米国の皆様には樂焼世界を堪能戴き、深い理解と共感を戴く機会を得ましたことに心から喜びを感じるものであります。
(樂吉左衞門)