California National Guard stand in formation guarding the federal building in downtown Los Angeles on Tuesday, June 10, 2025 (AP Photo/Eric Thayer)

カルチュラル・ニュース編集長・東繁春(ひがし・しげはる)
2025年6月20日 10:05AM発信

アメリカ合衆国の人口は3億5000万人ですが、不法滞在者は1100万人と推定されています。この数字は、メディアでよく引用されている数字です。

わたしがロサンゼルスに来る前の日本で、50年くらい前ですが、当時、アメリカの不法滞在者数は500万人と聞いた記憶があります。

人口4000万人のカリフォルニア州では、不法滞在者は260万人と推定されています。

ロサンゼルス・カウンティー(行政)が6月に発表した数字では、ロサンゼルス・カウンティーの人口約1000万人の約1/3が移民で、その移民人口の5%が、本人か、家族の中に不法滞在者がいる、と発表されています。

トランプ政権が軍隊を派遣した理由は、Sanctuary State, Sanctuary City に原因があります

 日本の報道は「知事の同意なく、トランプ大統領が州兵を派遣した」ことになっていますが、これは、自衛隊が災害派遣出動をするためには、県知事の要請が必要という日本の仕組みで、カリフォルニアを理解しているからだと思います。

カリフォルニア州やロサンゼルス市は法律や規定で、州の警察や市の警察は、連邦移民局に協力してはいけないことになっています。こうした制度をもつ州や市は、不法移民にとっての Sanctuary State, `Sanctuary Cityと呼ばれています。

ロサンゼルスでは、1979年にロサンゼルス市警察本部長から Special Order Dが発表され、ロサンゼルス市警は、移民の滞在資格を調べてはいけないことが決定されました。

1980年代には、全米で、移民局の捜査や摘発に、地方の警察が協力しない規定が広がりました。カリフォルニア州は2017年に、California Values Act (SB54)で、カリフォルニア州内の警察は、不法移民の取り調べをしない、不法移民の拘束をしない、ことを決定しました。

トランプ政権の現在の州兵の派兵は、この制度を突いているのです。連邦移民局の職員が不法移民の取り締まりをしているときに、暴動が起きているのに、カリフォルニア州やロサンゼルス市の警察は、連邦職員を守ってくれない、という名目でカリフォルニア州兵に連邦職員(移民局の取締役官)と連邦施設(移民局の建物や拘束者の留置場)を警護させるという手続きを取ったのです。

カリフォルニア州兵は通常は、州知事の指揮下にあるのですが、この指揮権を大統領が州知事から奪いました。これができる法律がアメリカにあるのです。日本で報じられているような州知事の同意が必要か、どうかというレベルとはまったく違う事態が起こっています。

6月19日、サンフランシスコの第9連邦巡回控訴裁判所は、州兵の指揮権が大統領にあることを認めました。このアメリカ大統領がカリフォルニア州兵の指揮権を持つことの有効性についての裁判は、連邦最高裁まで続きますので、まだ、最終決定ではありません。

しかし、決着がつくまでは、州兵の指揮権は大統領にあるので、ロサンゼルスでの、軍隊を展開させた強硬な移民局の取締りは続くことが予想されます。

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この記事へのコメント


6/20  3:23PM: ロサンゼルス K.T.さんから|私達一般の者が知らない情報をいつも教えて下さりありがとうございます。特に今回の州兵の指揮権の件では勉強になりました。


6/20  6:32PM 広島 Kさんから|米国の不法移民の現状は、日本のオールド・メディアだけ見ていては分かりませんね。「可哀そうな移民をトランプがいじめている」というような論調ばかりですから。現地の生の姿が垣間見られて、ありがたい情報でした。


6/20  6:35PM: 東京 T.S.さんから|東繁春さま、「ロサンゼルス移民問題の基礎知識」の記事、大変役に立ちました。記事に書かれている、州と連邦の法律の仕組み、そして双方の関係を知るものは(日本には)ほとんどいないでしょう。記事から察するに、今回の出来事はアメリカ民主主義と独裁者との確執の側面もあるのですね。ありがとうございました。


6/20 6:56PM  ロサンゼルス M.W.さんから|東さん、今日のメルマガ、「ロサンゼルス移民問題の基礎知識:州兵派遣の背景にあるサンクチュアリ・シティー規定」の報道良かったです。州や連邦政府の仕組みを知らないと、間違った問題解釈してしまうので、そんなことを説明してくださるとありがたいです。


6/20   10:00PM: ロサンゼルス T.A.さんから|東さん 私は、Sanctuary Cityという言葉について初めて聞きました。東さんのCultural Newsで(移民問題を)説明をしていただけるとは全く思わずサブスクライブしてたので、ひとつ知らなかったことが学べ、日本語での説明だったので理解しやすかったです。どれだけの人たちが、このように歴史的視点から今回の暴動について考えることができたでしょうか。東さんのようなジャーナリストがもっと増えて、私たちに正しい判断ができるようにニュース解説をTVや紙面で流してほしいものです。


6/21 10:06AM: ロサンゼルス K.W.さんから|東編集長    大変貴重な報告記事に感謝いたします。他社の日本語ニュースでは、ここまで詳細な内容を得ることができませんでした。日々の研鑽に感謝いたします。


6/21 11:01AM : ロサンゼルスJ.K. さんから|東さん、この記事、とても勉強になりました。Sanctuary state, city規定 など知りませんでした。ありがとうございました。