みやざきたかし詩集: 春風

宮崎 隆

 

一昨日、はじめて“春風”に出会った! そう生まれて初めて 80年経ち

もちろん「春風」という言葉は知っていたが、「接地」していなかったのだ

むしろありふれた通俗的な美意識にくるまれていて、できれば避けたかった

それがとても新鮮で、強い意志を伴って、匂い立つように、わが頬に触れた

すぐに陰る陽春の日射し、心に残像する紅梅の色合い、ふと感じる風の息吹

 

春風は故郷を忍ぶもの、孤独や悲しい境遇に似合うもの、それはそうだろう

巡りくる季節、流れゆく月日、自然と人事の齟齬、かなわぬ恋によく似合う

ただ先日の“春風”は、これまでの衣服を脱ぎ捨てて、ひやりと頬に触れる

そして心の深いところにメッセージを伝えていった、言葉でなくて感覚的に

非常に原初的な生命力、すべてを越え生きる力、の一端、そう今思っている

みやざきたかし詩集(24-009)                2024.2.29.

 

宮崎隆=関西の中高一貫私立校の国語の先生、ES国語塾の運営、派遣講師などをしながら日本語の表現を高めることを広めている。民謡の研究家でもある。

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