板橋恵理のカリフォルニア人間観察:ただいまコロナワクチン接種最中

2021年4月7日、ロサンゼルスにて、板橋恵理

皆があんなに待ち焦がれていた、 コロナワクチン接種を受けることの出来る職業や年齢層が広まっていく中、レストランや事業も段々開き始め、 嬉しさや安堵感が少しずつ人々の中で生まれて来たような気配がする。

近所のレストラン前に設けられたテントや天蓋の中は、 規定範囲数の客で埋まっているし、 テーブル待ちの客もいる。  「We are open!」 と感嘆詞付きの大きいサインが、 店のドアや窓などあちこちに貼られている。  友人の一人もワクチン接種後、 それこそ一年振りにレストランのテーブルに座り食事を楽しんだと感激していた。 六フィートちょっとの間隔が開いた隣のテーブルに座った、面識のない二人連れとたまたま目が合った瞬間、お互いガッツポーズで微笑んだ。言葉を発しなくても気持ちが分かる連帯感があったのだろう。

接種を受けられる人が増えてきていると共に、油断の気配も見られる。 マスク無しで散歩をしている人達を見るようになったし、買い物に出掛ければ店内は混みあい、肩が触れるくらいの間隔で人々が行き交っていたり、鼻からずり落ちたマスクのまま顔を近ずけて言葉を交わしている。これからワクチンを受ける人も、色々な理由で受けない人も大勢いるのだから、受けた側は彼らの立場を尊重しなくてはいけないだろう。

接種した友人や 知人の間で、 「ワクチン受けたよ!」 と絵文字入りのテキストやメールが行き交う。 ファイザー(Pfizer)とモデルナ(Moderna)のワクチンはそれぞれ三、四週間後に二回目接種を要するが、一回目を受けただけでも皆嬉しさを隠しきれず、誰かと分かち合いたいのだ。私も旦那と一回目のファイザーのワクチン接種を受けたが、ロスだけでなく他州や日本に住んでいる姉や友人らに報告し回った。

ワクチン接種を受けることの出来るグループにまだ制限があった時の人々の会話は、「ワクチン受けましたか?」だったが、今や「副反応ありましたか?」と「どのワクチンを受けましたか?」の二点に変わりつつある。ワクチンの予約場所や調達状況にも依るだろうから、ファイザーだろうが、モデルナ、或いは接種が一回制のジョンソンアンドジョンソン(Johnson &Johnson。  現在保留中)だろうがどのワクチンでも良いのかもしれないが、ワクチンを受けた者は、いずれ「ファイザー組」、「モデルナ組」、そして「ジョンソン組」とグループ別にされてしまうのかなと苦笑してしまう。

副反応も人それぞれで、全くなかったという人もいれば、頭痛、寒気、熱、倦怠感が伴ったという人もいる。教師である若い友人は仲間五人で同時に同じワクチン接種を受けたが、自分だけ副反応も何もなくぴんぴんとし、嬉しさではしゃぎ回っていたので、口の悪い私は、「何一人だけ狂喜してるの?もしかして間違って狂犬病かなんかのワクチンされたんじゃないの?」と言ってやり大笑いになった。これもワクチン接種を受けた人同士のみに通じる冗談なのだろう。

先日最寄りのマーケットへ行った時、薬局で帯状疱疹(Shingles)のワクチン接種予約を取っている七十ぐらいに見える客と薬剤師の会話が耳に入ってきた。帯状疱疹は高齢と関係しているので、接種は五十後半の人に勧められる。客の孫にでもなれそうなまだ二十後半に見える若い薬剤師は、「このワクチンは二回に分けて接種しますが、腕が痛くなりますよ」と、自分はまだ三十年近くも心配しなくても良いだろうに、まるで体験者のような口調で客と応対していたのが可笑しかった。コロナワクチン接種真っ最中の世の中、コロナ以外のワクチンの会話を耳にしたことに、何故か安堵感をも感じた。

板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。

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