2021年4月1日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
先月三月中旬の一週間以内で、 七件もの集団襲撃事件がアメリカで発生した。 つまり一日一回の割合で起こったことになる。 三月だけでも、 三十一件の集団襲撃事件が発生し、 そのうち四十四人の死者と百二十六人の負傷者を出した。
二月は四十一件の集団襲撃事件のうち、 四十九人の死者と百四十五人の負傷者、 そして一月は三十五件の集団襲撃事件で、 二十九人の死者、 そして五十四人の負傷者を出している。
勿論、他にも、 毎日のように犯罪は発生し被害者を出しているが、歴史上 アメリカでは集団襲撃事件が日常茶飯事となっていると言っても決して過言ではないだろう。 アメリカの学校や職場では定期的に避難訓練を実行しているし、まだ幼い小学校生でさえ、「ロックダウン(Lockdown)」という言葉と意味を知っているくらいだ。
三月ジョージア州とコロラド州の集団襲撃事件は 同じ週に起きたが、コロラド州では、 過去三回も多くの被害者を出した集団襲撃事件が発生している。1999年にコロンバイン・ハイスクールで、2012年は映画館で、そして三月にはスーパーマーケットで事件が起こった。三月の事件はボールダ―(Boulder)でおきたが、1999年と2012年のいずれの事件現場からは、わずか七十マイル範囲内に位置している。
今回ジョージア州とコロラド州で起きた事件で、犯人は両人とも精神的な異常があったと言われているが、事件前、正当的に、しかもたった一週間以内で銃を購入することが出来たそうである。つまり経歴のチェック(Background check)は問題無しとして購入が可能だったのだ。しかしコロラド州のスーパーマーケット事件の犯人は、以前暴行事件を起こしており、FBIの犯罪データには記録されていたにもかかわらず、それには引っかからずに、いとも簡単に銃を入手することが出来た。
毎回このような無惨な事件が発生する都度、政治家はああでもない、こうでもないと議論するが、毎回、何も結論に達せず実行もない。その上、特に最近メディアは被害者や加害者の人種や国籍に注目しがちで、人種の違う者が関わった事件だと、すぐにヘイトクライムを匂わせる記事を報道する。しかし月日が経つにつれ、メディアも政治家も、話題にしなくなる。残された被害者の家族、生存者、そして我々市民は悲しさ、苦しみ、怒り、不安を抱えたまま生きていく。生存者の中には、 自殺を図った者も多くいる。
過去の集団襲撃事件で生存者と家族や友人を失った人達のインタビューを見たが、 「何人の命が失わればこういう事件は無くなるのか? ヘイトクライムだろうがそうでなかろうが、 犯罪は犯罪なのだ」、 「事件直後、 政治家達は悔みの言葉をツィートするが、そんなのははっきり言って要らない。それよりも解決法を考えてくれ。 そしてトラウマと共に残された我々へのカウンセリングも事件直後のみでなく、 長期間与えてくれ」 と皆、口々に訴えていた。
アメリカは言うまでもなく大きな国である。その為、各州における銃規定を始め、司法関係の法律やら刑罰内容(死刑か終身刑)も異なる。銃の入手にあたっての規定や課程は、アメリカ全体統一すべきではないかと論じても、これも大きいアメリカでは賛否両論が続いており、なかなか困難なことだ。
被害者達は、事件当日も普段と変わりなく仕事、学校、店へと出かけ、何時間後、或いはわずか何分後かにそれぞれはかない命を失った。生存者と被害者の家族や友人も、トラウマを背負い、 はかない命を抱えながら、 今後生きていかねばならないのだ。
板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。
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