2021年1月23日、ロサンゼルスにて、板橋恵理
2020年のコロナ事態が発生してから、 それまでは普段聞いたことや使ったことのない用語がどんどん日常生活の中に入ってきた。 日本語、 英語両国語の例を挙げると、 「自粛・自斎」 、 「バーチャル (Virtual)」、 「ソーシャルディスタンシング(Social Distancing」などだ。 そしてこれらの用語に伴い、 人々はしたことがなかったマスクを着用するようになり、 人との距離を開け、 接触を避けざる得なくなった。
「自粛」と「自斎」の名詞はこのコロナ環境下、 交互に応用されているようだ。 「自斎」という言葉は、 ネット検索すれば出てくるが、 手元にある講談社出版の国語辞典には載っていない。 と言っても辞書が相当古いこともあるのだろうが。 勿論これらの言葉は昔から存在し、 使われた時期も状況もあったのだろう。 でも少なくともコロナ以前は滅多に使われなかった筈だ。 自分達が進んで行いや態度を慎むことが意味だが、 多くの場合は自ら取った行動や言動に対応することであろう。 コロナのように他の理由が原因であるからこそ、 今回の「自粛」や「自斎」の規定に反発する者が多いのかもしれない。
「バーチャル (Virtual)」は、 授業、 会議、 集会、 コンサート等に使用されるようになった。 コロナ事態発生当時、 この言葉を頻繁に耳にするようになったが、 それまで 「バーチャル」という言葉が普段の会話で出てこなかったもあり、 単純な私は単に「オンライン(Online)。。。」と口にしていた。 実質上は同じことかもしれないが。 ところでこの環境だからこそ多く使用されている、 ズーム (Zoom) でのバーチャル会議の利点は、 出席者が全員画面に向かって参加している為、 お互いの顔やら動作を正面から見ることが出来、 話しにも集中し易くて聴くことが出来ることにあると思う。 通常、 参加者が一室に集まって行われる会議では、 皆自分達のパソコンに集中しがちで、 話を聞いていない実例も多いと思う。 技術発展と共に便利さも増えただろうが、 人間が古い私は、 やはり同じ場所で実際に人と接するのが好きだ。 ましてやクラスをとったり、 コンサートを楽しむのにはバーチャルだと達成しにくい。
「ソーシャルディスタンシング(Social Distancing)」は、 まさにコロナ環境の為に生まれた言葉ではないかと思う。 ただ単に距離があったり開けるなら、 「ディスタンス (Distance): 距離」の言葉のみで通用するが、 ここに「ソーシャル(Social): 社会的」 という形容詞が加わると、 お互いの距離を開けるだけでなく、 それまで築かれた交流、 友情、 交際等全て避けろというニュアンスに何故か聞こえてしまう。 でもそれだけ事の重大さが示されているのかもしれない。
人間は子供だろうが大人だろうが、 一人では生きていけない。 人との触れ合いが大事だ。 「自粛.自斎」も、 「バーチャル集会」も「ソーシャルディスタンシング」もずっと続けていくのに社会的、 経済的、 心理的な限度がある。 今やワクチンも出回っているが、 この伝染病を終息させて元の生活に戻るにはまだ当分時間がかかるだろう。
去年の三月以来、 家族や友人、 知人との間での挨拶は、 それまでの「Have a nice day」や「Have a good weekend」 から「Stay safe and healthy」に変わり継続している。 2021年は早く逆に戻ることを願っている。
板橋恵理=関東地域で生まれる。家族の転勤と学校のため、幼年期から現在にいたるまで、日本ーヨーロッパー日本ーアメリカで生活する。現在は、アメリカ人の夫と老猫とロサンゼルスに在住している。趣味のひとつである太鼓にはまり、5年がたつ。老猫の名前もタイコ。
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