国語教師への提案/英語教育を国語教育の中に組み入れる提案

ロサンゼルスから、カルチュラル・ニュース編集長 東 繁春 から

日本での英語教育への関心が高まっていることは、たいへんよいことだと思います。しかし、実際に英語を勉強しているひとの話を聞いてみると、英語を学ぶときに、おおきな誤解をしている人も多いように思います。

例えば、幼児期から英語を勉強しておくと、英語も日本語もうまくなる、という話(バイリンガル)です。ロサンゼルスという場所は、外国で暮らす日本人に会う機会が多く、また、日本でインターナショナル・スクールに通っていたという人とも、会う機会がある場所です。

そうした人々の観察を通して、わたしには、子供がバイリンガルに育つためには、親がバイリンガルであることが必要と思います。つまり、子供だけが、英語がうまくなっても、バイリンガルにはなりません。

日本人の両親の下で、子供だけが英語を話すようになった場合、これは、親子の意思疎通がうまくいかなくなるので、お勧めできません。

大多数の日本人家庭に当てはまることは、まず、母国語である日本語を十分に習得してから、英語の学習に入ることが望ましいということです。日本語で考える力をつけてから、英語の学習をしたほうが、英語も早く学ぶことができるです。

わたしは、ロサンゼルスに33年間暮らし、英語の月刊新聞カルチュラル・ニュースを発行して16年になります。わたしの言語環境は、1日のうちに、英語と日本語のしゃべり分けが何回も起こるという言葉の「両生類」のようなことをやっています。

そうした「言葉両生類」をやっているうちに、自分自身についておもしろい発見がありました。わたしは、英単語を、漢字のように記憶しているのです。長い英単語のスペルをよく覚えているひとがいます。わたしは、このスペルは苦手なのですが、書いているといつのまにか、英単語になっているのです。

例えば「神」という漢字を書くとき、「まず、示すヘンを書いて、口を書いて、、、」などとは記憶していません。形を覚えていて、書くことができます。わたしの英単語の覚え方も、漢字と同じで、形で覚えていることの方が多く、スペルを聞かれると、口から出てこないけれど、書いてみるとスペルになっていることが多いのです。

日本で、日本語の教育を受けると、文字を見て覚える能力が発達するのでは、ないでしょうか。この日本人の能力を生かして、漢字を教える発展として英単語を教える教授法が考えられると思います。

例えば、仮名で「やま」漢字で「山」という文字を教える延長として Mountain を教えるという方法です。水とWater、火とFire の組み合わせがすぐに思い浮かびますが、マウンテン、ウォーター、ファイアーは外来語としてすでに日本語になっている言葉です。小学校で、このように日本語化している英語を教えれば、教師も、生徒も外国語の学習をしていると思わずに、外国語の習得が可能になります。

小学校で、こうして基礎的英単語を覚えることができれば、中学での英語学習は、文章を読むことから始めることができます。

英単語を表意文字として捉え、漢字教育の中に組み込む教授法が、可能ではないか、と私は、考えているのです。 (了)