2016/映画「シン・ゴジラ」=アメリカ大統領特使カヨコ・アン・パターソンは、実在しそうな人物

映画「シン・ゴジラ」でアメリカ大統領特使カヨコ・アン・パターソンを演じる女優・石原さとみ

映画「シン・ゴジラ」でアメリカ大統領特使カヨコ・アン・パターソンを演じる女優・石原さとみ

7月に日本で公開された話題の映画「シン・ゴジラ」が3カ月のうちにアメリカで公開されました。カナダも含めて440館で、10月11日から18日までの1週間限定で上映されました。

わたしは、最終日の18日、ロサンゼルス・ダウンタウンにあるリーガルLAライブ館で見ました。上映は1日に1回、午後7時だけで、私が見た最終日は、約300席のシアターは満員でした。

ストーリーを詳しく書くと、まだ、映画を見ていないひとの楽しみを奪うことになるので、アメリカに住む日本人として、伝えたいと思ったことだけを書きます。

わたしは日米関係の描き方がリアルだと思いました。「シン・ゴジラ」は日本人がふつうは知らないと思われるアメリカの一面をうまくストーリーに盛り込んでいました。

映画の中心人物のひとりに、アメリカ大統領特使カヨコ・アン・パターソン(石原さとみが演じています)という30代のアメリカ人女性が登場するのです。映画を見ているとだんだんカヨコの背景が分かってくるのですが、祖母は、広島の被爆者、戦後、アメリカ人と結婚した日本人という設定です。

1953年にアメリカ政府が、日本人女性とアメリカ軍兵士の結婚を認め、アメリカへの移民を認めるようになって、10年間に約10万人の日本人女性がアメリカに渡りました。戦争花嫁と呼ばれる世代です。

現在、アメリカ太平洋軍司令官のハリー・ハリス氏の母親は、戦争花嫁世代のひとです。ハリー・ハリスの名前からは、母親が日本人であることはわかりませんが、ハリス氏のように、日本人の母親をもつアメリカ人が政府や軍隊で重要な地位にいることは事実なのです。

映画「シン・ゴジラ」のカヨコは、ハリス氏世代の娘ということになります。ピッツバーグ出身の黒人演歌歌手のジェロもこの世代です。映画では、カヨコは、父親が有力上院議員ということになっていて、これはハワイ選出で、連邦上院議員を長く務め、上院議長代行(大統領継承順位3位)までになった故ダニエル・井上氏を意識した設定でしょう。

映画「シン・ゴジラ」は、ゴジラ対策を話し合う政府高官たちが集まる首相官邸や危機管理センターの情景がリアルという映画評が公開直後から出ていましたが、アメリカ人の登場人物も十分リアルに感じられるのです。映画「シン・ゴジラ」は、「ゴジラ」という架空の生物を中心としてストーリーが展開するのですが、映画で描かれたことは、すべてが実際にありそうだ、と思ってしまう映画でした。

(カルチュラルニュース編集長、東 繁春、2016年10月19日記)