国の「国際競争ランキング」が意味を持たない時代

<チューリヒ発9月28日、ロイター電では以下のように伝えています>

世界経済フォーラム(WEF)が28 日発表した国際競争力ランキングによると、スイスは8年連続で首位を維持した。日本は昨年の6位から8位に後退した。

スイスは技術革新やビジネス環境、従業員の効率性で高い評価を保っており、特に技術力が大きく進歩したため、全体の競争力はWEFが2007年に現在のランキングを開始して以来最も高い評価を得た。

このほか、2位はシンガポール、3位は米国で昨年と同じだった。

<引用を終わる>

こうした国際比較のニュースを読むときに、いつも思うことは、この記事はウソは書いてはいないが、本当のことは伝えていない、ことです。

分数は小学校のときに習いました。<100分の10>と<10分の5>では、どちらが、大きいかは、簡単にわかります。<10分の5>のほうです。しかし、冒頭のロイター電は、分子の<10>と<5>を比べて<100分の10>のほうが大きいと言っているようなものなのです。

世界経済フォーラムの国際競争力ランキングはGlobal Competitiveness Index 2016-2017 と言います。WEFのサイトに400ページのPDFファイルがありました。そのファイルを探して行くと、順位が発表されていました。

1位、スイス(人口約830万人、国土は九州くらい)

2位、シンガポール(人口約560万人、国土は東京23区くらい)

3位、アメリカ(人口約4億人、国土は日本の25倍)

4位、オランダ(人口約1700万人、国土は九州くらい)

5位、ドイツ(人口約8200万人)

6位、スウェーデン(人口約1000万人、国土は日本の約1.2倍)

7位、イギリス(人口約6500万人、国土は日本の3分の2)

8位、日本(人口約1億2000万人)

9位、香港(人口約730万人、面積は東京都の約半分)

10位、フィンランド(人口約550万人、国土は日本よりやや小さい)

国ごとの人口や国土面積は、外務省ホームページの基礎データからの引用です。このデータは、日本との比較が出ているので、分かりやすいと思います。

2016年の国際競争力ランキングで、この10位までの国と地域(香港の場合)を見たとき、人口が1億人の国だけで、比べると、1位がアメリカ、2位が日本になります。

さらに人口が5000万人以上の国だけで、比べると、1位がアメリカ、2位がドイツ、3位がイギリス、4位が日本になります。この順位が、現実に近い数字のように思います。

2016年国際競争力ランキング1位のスイス、2位のシンガポールと、日本では、そもそも、比較のしようがありません。比較ができるとしたら、スイス(人口約830万人)と九州(人口約1300万人)とか、シンガポール(人口560万人)と東京23区(人口940万人)です。

九州とスイスを比べて、スイスのほうが、経済力は上という結論や、東京よりもシンガポールのほうが、今後の経済発展がめざましい、という話なら、これはわかります。

しかしロイター電に戻って、スイス、シンガポールと日本を比べること自体が、あまりにも、現実からかけ離れた情報、誤報であると言えないでしょうか。

ロイター電だけではなく、共同通信も、まったく同じ内容のニュースを伝えています。こうした、現実からかけ離れた国際ニュースを報道しているのは、ロイター通信社だけではありません。

(カルチュラルニュース編集長、東 繁春 ・2016年10月2日 記)