2016/LA半田俊夫の日本紀行 / 素晴らしきかな・島根の足立美術館

By 半田俊夫 (はんだ としお)

この春、好きな島根県を回った。中で訪れた安来市の足立美術館は絵も建物も大きな日本庭園もすべてが素晴らしく、魅せられ痺れた。印象を書いてみる。

瀬戸内の岡山から伯備線で中国山地を縦断して日本海の島根に向う。この山越え列車の路線では途中インターネットが全く入らない。緑の山や平原を走りやがて鳥取に入ると右手遥かに悠然の大山が望める。やがて島根の穴道湖が右手に現れこれがずっと続き大きいなーと感じ入る。

足立美術館 【半田俊夫・撮影)

足立美術館 【半田俊夫・撮影)

旅程として出雲まで行き一泊。翌日は出雲大社を歩き参拝。日本民族の心の故郷の一つと言える。これで昨年の高野山、伊勢神宮の往訪に続く「やまとの地」巡回への念願が叶った。松江に移動して先ず松江城、岡の上の城の更に天守閣まで登ると眺望は遥かに光る海まで望む絶景だ。ずーっと降りて緑と花の中を歩いてからはお堀端に小泉八雲の旧邸をゆっくりと見学。明治期に自分が住んでいた気分になる。成る程、この静かな佇まいの庭を眺めながら著作をものにしたかと想像に耽り、ラフカディオ・ハーンの松江生活を偲んだ。

さて安来市に移動し一泊。ここはコミカルなどじょう掬い踊りの安来節で知られるが、地元の人の話だとこの踊りは本来は砂浜での砂鉄すくいの踊りが変化したものだという。もっとも砂鉄を掬いながら、たまにどじょうも掬えることもあったらしい。良質の砂鉄により、弥生の古代以来、有数の鉄器生産の地だそうで、現代も安来ハガネのブランドで製造を続ける日立金属に繋がっている。

足立美術館の日本庭園 (半田俊夫・撮影)

足立美術館の日本庭園 (半田俊夫・撮影)

いよいよ翌日、旅のクライマックスとなった足立美術館である。駅から車で約30分の距離に遠く山々を望む緑の平野の中、流れる川からほど近く に美術館は展開する。白い建物は前後左右上下へと複雑な設計で訪問者を誘う。時に外に出たり中に入ったり。至る所の緑が美しい。裏千家の先代宗室が整えた茶室が緑の一角に静かに佇む。絵に接する前にこの導入部を歩いているだけで楽しい気分になる。

先ず作品である。横山大観、榊原紫峰、川合玉堂、橋本関雪、上松松園、伊東深水など近代日本画壇の巨匠たちの素晴らしい名画の数々の一つ一つに釘付けにされ中々次の絵へと移動できない。昭和45年(1960)の開設以来1,500の作品を四季に合わせて年に4回の展示替えを行っているという。

これらの大型作品は我々の想像力を遥かに越える美意識、個性、感性、構図の壮大さ、研ぎすまされた繊細な筆致、神々しいまでの色彩感覚、優雅さと荘厳さを僕ら見る者の両目に放ち、世界の諸絵画を凌駕する最高度の美の世界だと感じ入った。フランス印象派もルネッサンスも問題にならない。幾らでも絵の具を塗り重ねられる西洋画とは違う。仏印象派の巨匠たちが日本画にこぞって魅せられ夢中になったのも然もありなんと納得する。仏印象派の作風は時期は幕末から明治初期だが、日本画に接したことで生まれていったのだ。

足立美術館 (半田俊夫・撮影)

足立美術館庭園内の茶室の門 (半田俊夫・撮影)

絵の中では創設者、足立全康(明治32年 – 平成2年)が特に入れ込んだ横山大観の作品は約120点が貯蔵されて有名で,常時20点ほどが展示されているという。これも四季毎に入れ替えるのでファンは何度も行く価値がある。

更に、特筆は足立美術館の五万坪という広大な日本庭園は京都の桂離宮、二条城二の丸庭園、福岡大濠公園など日本全国約900の名園を押さえて13年連続で日本庭園ランキングの一位を続けていること。四季ごとに色と趣を変えるこの庭園自体も作品の一つと意図していて、創設者足立全康の魂がこもった日本一の一代美庭だ。

足立美術館は明治、大正、昭和を生き、ゼロから刻苦して大成した実業家足立全康が人生を賭け情熱を注ぎ私財を投げ打って約1,500点に及ぶ膨大な名画を集め続け、故郷に広大な土地を買い美術館を建設し創設したものだ。回りにビジネスが建って俗化しないようにと必要の3倍規模の土地を買った。美しく広大な緑の自然以外に何も無い。遠くの山々が広く美しい庭園の自然の借景になっている。素晴らしい。

創設者、足立全康に満腔の敬意と感謝の念を捧げる。

(完) 2016年9月22日投稿

 

足立美術館 Adachi Museum of Art
692-0064 島根県安来市古川町 320
Tel: 0854-28-7111
https://www.adachi-museum.or.jp

半田俊夫: 東京出身。パサデナ市在住。在米約40年。元航空業界商社経営。以下の諸ボランティア活動を行う:羅府新報の随筆「磁針」欄に毎月執筆。日刊サン・ポエムタウン欄の川柳選者。パサデナ・セミナー会主宰。命の電話友の会、茶道裏千家淡交会OC協会などで会長として現役ボランティア活動。他に南加日系商工会議所、南加県人会協議会、日米文化会館、小東京評議会、米国書道研究所などの理事役でもボランティア活動中。南加日商の元会頭。日系パイオニア・センター、L.A.東京会および小東京ロータリー財団の元会長。リトル東京ロータリークラブ創設会員。

 

 

このカルチュラルニュース日本語版サイトに掲載記事についての、感想、お問合せは、カルチュラルニュース編集長の東繁春(ひがし・しげはる)へ送ってください。higashi@culturalnews.com